立川は「出張所」として復活――同人ファンの「希望の光」となるか?
閉店が続いていたとらのあなであったが、9月に入って新たな動きがあった。
半年前に閉店した
とらのあな立川店が、9月11日に「
出張所」というかたちで復活を遂げたのだ。
新たに「
とらのあな出張所」が出店したのは、立川駅南口にある再開発ビル「アレアレア2」3階にある「オリオン書房アレア店」の一角で、「とらのあな出張所inオリオン書房アレア店」としてオリオン書房を傘下に持つ「リブロプラス」との連携によって運営される。
書店の一角で運営されるため単独店舗よりも面積は狭いものの、店内ではおもに同社が委託販売する男性向け同人誌を中心に、同人音楽CD・同人ソフトなどの販売もおこなわれる。
「とらのあな出張所inオリオン書房アレア店」(写真:コミックとらのあな)
規模は縮小されたものの、約半年ぶりの「立川再出店」となった。
実は、とらのあなが書店に併設するかたちで「出張所」を出店するのは立川が初のことではない。2015年には愛知県豊橋市の豊橋駅前にある大型書店「精文館書店」の本店3階でも書店併設型の「とらのあな出張所 in 精文館書店豊橋本店」を開設。こちらも精文館書店との連携によって運営されており、小規模店舗ながら今年の「大量閉店」にも耐え、約5年に亘って営業を続けている。これまで「とらのあな」が出店していた都市はすべてが首都圏近郊か、地方の政令指定都市のみ。豊橋市は人口30万人台であり、「とらのあな」が単独店舗を構えるには都市規模が小さすぎるものの、一般書店への「出張所」という形式を採ることで出店を実現できたといえる。
とらのあなは「出張所」を「コロナ禍の影響下の中での多様性を踏まえた今後の出店形態のひとつ」だとしており、コロナ禍によりとらのあなが撤退した地域においても、こうした「既存書店と提携した『出張所』形式での再出店」が期待される。
一方で、書店の一角を使う「出張所」形式はこれまでの単独店舗よりも「出店させやすい」ことは当然であるが、逆に「閉店させやすい」という特徴も併せ持つ。そのため、出店から僅か2年で閉店した「松戸出張所」(千葉県松戸市)や「船橋出張所」(千葉県船橋市)のように短命であった店舗も存在する。
コロナ禍・コミケ中止による「同人不況」に苦しむとらのあな。
もし今後「とらのあな出張所」が近隣に出店したならば、店舗存続のためにはこれまで以上に地域のアニメファン・同人ファンによる「実店舗での買い支え」が求められることになろう。
地場書店の一角に出店する「とらのあな出張所 in 精文館書店豊橋本店」。
とらのあな撤退地域にも「書店併設型」での店舗復活があるかも知れない。
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『
都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
@toshouken」