誤認を誘う加藤勝信官房長官の答弁手法。その「傾向と対策」
2.極端な仮定を置いて否定してみせる
3.不都合な事実を隠す「ご飯論法」
Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」
— 上西充子 (@mu0283) May 6, 2018
A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」
Q「何も食べなかったんですね?」
A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので・・」
そんなやりとり。加藤大臣は。
「朝ごはん」は食べたかと問われているのに「ご飯(白米)は食べていない」と勝手に論点をずらして答えるのが「ご飯論法」なのだが、なぜそうするのかと言えば、不都合な事実を答えずに済ませたいからだ。ここで言う不都合な事実とは「パンを食べた」だ。 「何も食べなかったんだな」と相手に思わせることができれば、それ以上の追及を受けずに済む。だから、嘘をつかずに、相手に逆の認識(=何も食べなかった)を与えようとするのだ。 このようなご飯論法は安倍晋三元首相や安倍政権の閣僚たちも多用してきたが、その多くはご飯論法を駆使して書かれた答弁書を棒読みしていたものと考えらえる。それに対して、加藤氏はご飯論法をアドリブで駆使できる。それだけ頭が切れる。記者には侮れない相手だ。 下記の記事で映像へのリンクを貼って紹介しているように、働き方改革関連法案の国会審議が行われていた2018年1月31日の参議院予算委員会において、加藤氏(当時は厚生労働大臣)は、浜野喜史議員の質疑に対して、アドリブでご飯論法を披露して見せた。 ●上西充子:映像で確認する「ご飯論法」(初級編)。高プロが労働者のニーズに基づくという偽装を維持した詐術(ハーバー・ビジネス・オンライン、2019年1月4日) 労働時間の規制緩和策である裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度の導入という二つの法改正について、労働者側からの要請があったのかと問うた浜野議員に対し、加藤厚生労働大臣(当時)は自分でそのようなニーズを聞き取ったかのような答弁を行った。それに対し、そういう意見があったという記録は残っているのかと浜野議員が問うと、加藤氏はこう答えた。 「いま、私がそうしたところへ、向か……あの、企業等を訪問したなかでお聞かせいただいた、そうした意見、あの、声でございます」 記録が残っているか否かを答えていない。言い淀んでいるところにも注目していただきたい。言い淀んでいるのは、不都合な言質を取られないように、うまく言い繕えるよう、頭を働かせながら答えているからだ。 浜野議員はもう一度、端的に問うている。「その記録はですね、残っているんでしょうか」と。加藤氏は、あたかも記録はないと聞こえる答弁を行う。 「そこでは、その思うところを自由に言ってほしいということでお聞かせいただいたお話でございますから、記録を残す、あるいは公表するということを前提にお話をされたものではございません」 記録はないと聞こえる答弁だが、記録があると答えたか、ないと答えたか、と注意深く聞いていれば、記録の有無には言及していないことがわかる。こういう時に大事なのは、更(さら)問い(重ね聞き)だ。浜野議員は再度、問う。「私は厚労大臣を疑うわけじゃありませんけれども、記録ないわけですね。もう一度、確認させてください」と。さて、加藤氏は何と答えたか。 「公表するという意味でお聞かせをいただいたわけではありませんが、ただ、やはりそういたフランクな話を聞かせていただくということは、私は大事なことではないかと思います」 話をそらしていることがわかるだろう。先ほどは「記録を残す、あるいは公表するということを前提にお話をされたものではございません」と、「記録」という言葉を使いながら、記録はないと思わせる答弁を行ったわけだが、更問いをされたことによって、「記録」に言及するとボロが出ると思い、話をそらしたものと思われる。 これに対し、浜野議員は、「そういうふうにおっしゃいましたけれども、記録はないということでございました」と返した。実際にはその後、記録を出せ、という話になり、記録らしきものが出され、その記録の瑕疵があらわになっていくのだが、その点は上記の記事をご確認いただきたい。 このように加藤氏は、不都合な問題があるときには、聞かれたことに誠実に答えず、往々にして論点をずらす。そのことを念頭に置いて答弁を聞き、「今のは、論点をずらしたお答えでしたが……」と、ぜひその場で、更問いをしていただきたい。この「ご飯論法」を初めて森友問題で聞いたとき足元が崩壊する感覚に襲われた。「(文書の存在を)確認したか?」と聞いてんのに「(ルールを一般的に)確認した」と答弁。これじゃあ全ての審議前提が崩れるわ。 / “「朝ごはんは食べたか」→…” https://t.co/bnqglEsn5E
— 紙屋高雪 (@kamiyakousetsu) May 7, 2018
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