多様性を推し進めるアカデミー賞の新基準。「映画が変わってしまう」という批判の愚

画面の裏にも新基準が影響

基準B:製作の主導権とスタッフについて  基準Bを満たすには、作品は下記の基準のうち、ひとつ以上が該当すること。  ▼B1・製作の主導権と各部署の責任者について   次の製作責任者や各部門の責任者のうち、2人以上が下記のグループに該当する。   キャスティング・ディレクター、撮影、作曲、衣裳デザイン、監督、編集、ヘアスタイル、メイクアップアーティスト、プロデューサー、プロダクション・デザイナー、舞台装置、音響、特殊効果、脚本家  ・ 女性  ・ 人種や民族集団  ・ LGBTQ+  ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人   少なくとも一人以上が下記の人種もしくは民族の出自である。  ・ アジア系  ・ ヒスパニック/ラテン系  ・ 黒人/アフリカ系アメリカ人  ・ 先住民族/アメリカ先住民/アラスカ先住民  ・ 中東系/北アフリカ系  ・ ハワイ先住民/太平洋諸島系  ・ そのほかの人種や民族  ▼B2・その他の主要なスタッフについて   少なくとも6人以上のスタッフ/製作班、技術職(プロダクション・アシスタントを除く)が下記の人種もしくは民族の出自である。これらのスタッフは第一助監督、照明監督、スクリプターなどを含むが、これに限定されない。  B3・その他、全体のスタッフの構成について   スタッフの30%以上が、下記のグループに該当する。  ・ 女性  ・ 人種や民族集団  ・ LGBTQ+  ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人  こちらも同じく、スタッフの多くが白人男性で占められないかぎり、ほとんどの作品がクリアすることになる。

映画産業全体の底上げにつながるか

 基準Cは業界全体の雇用におけるダイバーシティを推進していくものだ。社会全体がこういった取り組みを行っているなか、映画産業もその流れに乗っていこうという思惑が見て取れる。 ●基準C:業界への参入と雇用機会について  基準Cを満たすには、作品は下記の基準のうち、どちらも該当すること。  ▼C1・有給実習生、およびインターンシップの機会   作品の配給会社もしくは出資会社には、下記のグループに該当する有給実習生インターンシップがおり、下記の基準を満たしていること。  ・ 女性  ・ 人種や民族集団  ・ LGBTQ+  ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人   メジャースタジオ/配給会社では、次の役職の多くに独立した有給実習生/インターンシップ(また人種や民族集団も含まなければいけない)がいなければならない→製作/開発、物理的な製作、ポストプロダクション、音楽、特殊効果、配給権の取得、業務、配給、マーケティング、宣伝  ▼C2・実習の機会と技能開発   作品の製作、配給もしくは出資会社は、下記のグループに該当する者に、実習もしくは雇用機会を提供すること。  ・ 女性  ・ 人種や民族集団  ・ LGBTQ+  ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人
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宣伝など観客にも影響する新基準
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