店舗ごとに細かなルールは違うが、大まかにはパチンコ店の利用客であれ、パチンコ店を利用したことのない人であれ、区別なく駐車場の利用が可能である。
店舗ごとに出庫の自由不自由や損傷被害等に対する責任を負わない旨の誓約書を交わすこと等、一定の取り決めはあるものの、基本的にはパチンコ店側の慈善や厚意に拠るところが大きい話なので、利用者側には大きな負担はない。
今年の台風はこれで終わった訳ではない。台風被害自体が年々甚大になっている状況を鑑みても、今月来月再来月とこのような事態が起こる事は十分に想定内だ。もし次に大型台風の被害が想定される場合が、最寄りのパチンコ店の発信する情報に耳を傾ける事も良いかも知れない。
今回のパチンコ店の立体駐車場利用で特筆すべきことは、NHKニュースが「台風に備えて車を(パチンコ店の)立体駐車場へ避難させようという動きが広まって」いると報じたことだ。
具体的に言えば、鹿児島県にあるユーコーラッキー新屋敷店が立体駐車場を開放しているというニュースなのだが、パチンコ店の災害時利用を世間一般に大きくお知らせする良い機会であったし、何よりも地域防災の一役の担い手としてありがたい報道であったろう。
しかし一部の業界関係者のなかでは、このニュースに心を痛めている人もいる。
駐車場の開放を発表したユーコーグループの告知
とあるパチンコ業界関係者は言う。
「台風災害に際して、NHKがパチンコ店の立体駐車場利用について広く周知してくれるのはありがたいことですが、少し残念だったことは、『パチンコ店』ではなく『
遊戯施設』と紹介されていたこと」
実際、
NHK鹿児島NEWSでは「こうした中、鹿児島市新屋敷の遊戯施設では、6日から立体駐車場を無料で開放しました」とある。
「コロナ禍のなか、
パチンコ店をネガティブに報じる際には『パチンコ店』で、今回のようなポジティブな発信の時は『遊戯施設』と表現されることに違和感があります。そもそもパチンコは
『遊戯』ではなく『遊技』。報じてもらえるのはありがたいが、心境は複雑です」
この報道の「遊戯施設」という表現がどのような経緯をもって選択されたのかは知る由もない。ちなみにコロナ禍の初期に、パチンコ大手チェーン店が協力休業に応じたニュースをNHKが報じた際には「パチンコ店」となっていた。
詰まるところ、記事を書く人、
ニュースを報じる人の個人的な見解や知見が表出するのだろう。
何にせよ最後の段は蛇足だ。
読者の方々は、災害時における避難等の選択肢として、地域のパチンコ店を頭の片隅においておいても良いのでは、ということが本稿の主旨である。
<取材・文/安達夕>