任天堂はテンセントの販売ネットワークを活用してニンテンドースイッチを販売するなど、同社との関係は深い(写真:Tencent Games)
その筆頭は、同社の’19年の売上高約5兆円の3割以上を占めるゲーム部門だ。10年以上日中間のゲームビジネスに携わっている飯島剛氏は、業界地図が大きく変わる可能性があると言う。
「スマホアプリが全盛の現在では、プラットフォームのストアから排除されたらゲームは存在し得ない。もし世界最大のゲーム会社であるテンセントが締め出されたら、世界のゲーム業界は激変するでしょう。テンセントが40%の株式を保有するエピック・ゲームズが提供しているアンリアルエンジン(開発ツール)は建築業界などゲーム以外の分野でも利用され、日本でも広く使われている。仮に規制されるようなことがあれば、影響は計り知れません」
中国ではゲーム分野は規制産業で「外資企業はゲーム配信が許諾されない」(飯島氏)。つまり、日本のゲームメーカーは中国企業と組まなければ配信することができないのだ。コナミやバンダイナムコなど多くのメーカーは、テンセントと共同開発することで市場に参入。また任天堂は、テンセントが出資するEC大手・JDドットコムなどを通じてニンテンドースイッチを販売している。
ゲームだけではない。テンセントは動画や音楽、漫画などを配信するプラットフォームも運営しており、『ワンピース』など多くのコンテンツの配信権も取得している。
8月26日、米中間で緊張が高まる南シナ海に向け、中国が弾道ミサイルを発射した。対立が深まる一方だが、我が国は果たして規制に追従するのか。厳しい舵取りを迫られそうだ。
<取材・文/大橋史彦>
※週刊SPA!9月1日発売号より