子育てをチームとして機能させるためには、妊娠中から話し合うといいと東野さんは言う。ベネッセ教育総合研究所のデータにもあるように、夫婦間の愛情レベルが高い妊娠中に子どもがいる生活をイメージしておくのは有効だろう。気持ちがすれ違ってしまってからでは、話し合いの場を設けることすら難しくなる。
夫婦のコミュニケーションのコツとして、東野さんは「夫婦はお互いに違うことを理解し、過度に期待をしないことも必要」とアドバイスする。
「夫婦仲が悪くなってしまう背景には、『こうしてくれるだろう』『変わってくれるに違いない』という期待値の高さがあります。また、ホルモンバランスの変化で否応なしに母親になる女性に対し、男性には大きな変化はありません。お互いの状況や傾向について、普段から話し合う習慣を作っておきましょう」
たとえば、男性は一般的に女性に比べて赤ちゃんの泣き声への反応が弱い。イタリアでの調査でも、このことが実証されている。もちろん慣れていけば気が付くようになるので、妻は夫を最初から責めないことも大切だ。
夫婦のコミュニケーションをサポートするツールは、ネットで簡単に見つけられる。たとえば内閣府がホームページに載せている
「〇〇家作戦会議」。今の気持ちや、家事分担など4つの設問に答えることで、現在の素直な気持ちを伝えたり、将来についての理想をパートナーと共有できる。
また民間企業からは、「株式会社すきだよ」が提供する
「ふたり会議」というツールがある。パートナーがそれぞれ登録し、「こんなときはどうしたいか?」というシンプルな質問に答えることで、価値観のすり合わせができる仕組みだ。結婚前や妊活といったライフステージ別に使える。
「株式会社すきだよ」によれば、「産後編も今後リリースを予定している」という。東野さんが勧める妊娠期から将来を考える習慣作りに役立てられそうだ。
東野さんは、「お子さんが幼児期の間の父親の役割は、シンプルです」と言い切る。
「夫の役割は、妻の精神的健康を保つこと。それだけです。今は手がかかっても、いずれ親から自立します。子どもが巣立った後は、夫婦だけの生活が始まるわけです。もし育児中に夫婦の信頼関係が崩れてしまっていたら、熟年離婚になりかねません。
もちろん仕事は大切です。でもコロナ禍で生き方が見直されている中、家庭と仕事のバランスを考えてみてください。奥さんからの愛情レベルを維持し、良好な家庭環境を保てるかどうかは、夫の行動次第なのですから」
<取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。