辺野古でジュゴンの鳴き声を4か月連続で検知。しかし防衛局は「人工物の音」ということにしたい!?

「環境監視等委員会」の監視が必要

 これまで見てきたように、防衛局にとってジュゴンが辺野古・大浦湾に来遊または生息していることは「不都合」なように見える。そして、環境監視等委員会の目的は「辺野古新基地工事が環境に与える影響を低減するために、科学的かつ専門的な助言を、事業者である防衛局に与える」ということのはずだが、それがまったく機能していない。  環境監視等委員会は1〜2か月ごとに不定期開催されているが、議事録公開には数週間から1か月程度かかる。また、発言者の名前が議事録に記載されていないため、発言した委員と分野を特定することが難しく、助言の信憑性自体が著しく低くなっている。  委員名簿を見ると、テレビや新聞にも登場する著名な委員もいる。環境監視等委員会が機能するために、専門家が発言に責任を持って科学的・専門的な助言をするためにも、市民による監視が必要だと筆者は考えている。

辺野古は「唯一の解決策」どころか、最も新基地を作ってはいけない場所

日本自然保護協会のインフォグラフ

日本自然保護協会のインフォグラフ

 沖縄のジュゴンは絶滅の危機にある。日本政府は、米軍普天間飛行場の移設には「辺野古が唯一の解決策」と言い切るが、実は最も作ってはいけない場所ではないだろうか。  辺野古・大浦湾にはわずか約20㎢の海域に5334種の海生生物が棲み、そのうち262種はジュゴンも含めて絶滅危惧種である。一方、ハワイの「パパハナウモクアケア海洋国立モニュメント」は151万㎢(日本面積の約4倍)に約7000種の海洋生物が生息する。そのような世界に誇れる生物多様な海に7万1000本の砂杭を打ち込んで軟弱な地盤を改変し、その砂は外部から持ち込まれ外来種による深刻な悪影響が懸念されている。 「最も基地を作ってはいけない場所」で工事が行われている−−。そのことを最もよく知っているのは、当の専門家たちだ。辺野古のジュゴンの鳴き声にどう対処していくかは、科学者として正しい行いをするかどうかのリトマス試験紙になるだろう。 <文・写真/幸田幸(環境ライター)> 【参考文献】 市川光太郎『ジュゴンの上手なつかまえ方』(岩波科学ライブラリー、2014年) ダイビングチームすなっくすなふきん編『大浦湾の生きものたち―琉球弧・生物多様性の重要地点、沖縄島大浦湾―』(南方新社、2015年)
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