辺野古でジュゴンの鳴き声を4か月連続で検知。しかし防衛局は「人工物の音」ということにしたい!?

沖縄防衛局、音声データ公開を拒否

 そもそも、防衛局はジュゴンの鳴き声と見られる音声を公開していない。ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんは今年7月、防衛局に、沖縄選出の赤嶺政賢衆議院議員事務所を通してジュゴンの鳴音データの公開を求めた。  しかし、音声データは「調査を委託している業者との契約に含まれていない。専門家による識別・解析結果の提供のみが契約となっている」という理由で公開を断られたという。  吉川さんは「調査の依頼元が沖縄防衛局なのに、なぜ業者に出させることができないのか、理由が不明瞭です。防衛局は風による音などと言い訳をして、ジュゴンの鳴き声だと認めたくないように見えます。いま防衛局がやるべきことはジュゴンの音声データを公開し、国内外のジュゴン専門家に知見を仰ぐことです」と指摘した。  ジュゴンの鳴き声は、国内で唯一ジュゴンを展示飼育する鳥羽水族館(三重県)のウェブサイトでも公開され、誰でも聞くことができる。ジュゴンの生態を研究している京都大学フィールド科学教育研究センター・市川光太郎准教授の著書『ジュゴンの上手なつかまえ方』(岩波書店)によると、ジュゴンは「ピヨピヨピーヨ」などと鳴き、「挨拶のように鳴き交わして互いの距離を保っているのだろう」と説明している。  果たして、ジュゴンの鳴き声は、風を受けたフロートが発する音と酷似しているのか。7月の環境監視等委員会の議事録によると、「ジュゴンの鳴き声と海上人工物が出す音の周波数との違いを把握すれば問題ない」と提案した委員の発言に対し、ジュゴンの専門家と見られる委員は「そういった検討(人工物が出す音の周波数の把握)もすでに考えていると思いますが、しているのですかね」と悠長に回答。議事録を見る限り、これまでジュゴンの鳴き声とされてきた音に混乱が生じている事態に対して明確な反論をしていない。  ジュゴンの鳴き声であるかどうかを明らかにしたいのであれば、前述の吉川さんの指摘のように海外の専門家に知見を仰ぐこともできるだろう。それをしない防衛局と環境監視等委員会の専門家としての姿勢には大きな疑問が残る。

ドローン調査も却下、ジュゴンを見つける気がそもそもない?

防衛省と交渉する日本自然保護協会の安部真理子さん

防衛省と交渉する日本自然保護協会の安部真理子さん(2020年8月21日)

 防衛局は、ジュゴンの姿を捉えるために、監視船を3隻から4隻に増やしたとしている。しかし、監視船の目的はジュゴンが工事実施区域に近づかないよう監視することで、海上作業のある日しか稼働していないので限界がある。また、ヘリコプターでの監視は4月に4回、5月に3回、6月に4回実施し、セスナによる監視も5月と6月に実施したとしている。しかしいずれの調査でもジュゴンは見つけられなかった。  一方、近年ではドローンによる調査が多くなっているようだ。IUCN「種の保存委員会」海牛類専門家グループは沖縄のジュゴンの調査計画策定のために、国内外の専門家による作業部会を昨年9月に鳥羽水族館で行った。  その後12月に発表したIUCN調査計画によると、「近年ではヘリコプターなどの有人飛行機に代わってドローンを用いる調査が増えている」と2013年の論文を引用し、ヘリやセスナよりもむしろドローンによる調査を提案している。  調査計画は日本語にも訳され、日本政府、沖縄県にも提出された。大浦湾のような、数十㎢の小規模調査では、格子状のサンプリング調査を行い、飛行中に連続して静止画像を記録すること、といった具体的な方法も提案されている。  8月21日、日本自然保護協会が防衛省との交渉で「なぜドローンや環境DNA(※)でもジュゴンの生息調査を行わないのか」と質問したところ、防衛省は「沖縄防衛局が行なっている従来の調査実施方法に問題はない」と回答した。ジュゴンの姿を見つけられていないにも関わらず、だ。これでは、大浦湾でのジュゴンの存在を認めたくないように見えても仕方がない。 ※環境DNA調査:生物体から遊離・放出され水中に浮遊するDNAを調べることで、ジュゴンの存否確認を行う。
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辺野古は最も新基地を作ってはいけない場所
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