「順番のない順番」を待っていた若者は何から逃げ、何を見つけたのか?<映画『ソワレ』外山文治監督&村上虹郎>
役者を演じる役者だからこそ理解できたこと
彼が抱えている悩みは非常に普遍的なものです。何しろ、向き合っているのは、現実だったりとか、目の前のライバルだったりとか、シンプルに自分の才能や役割だったりしますから。彼の本当の敵は、芽が出るかどうかもわからないことに、継続して努力するかということです。それはきっとどの業界でもあることですし、僕はこの業界しか知らないからこそ、彼のことを理解できました。でも、タカラと比べれば圧倒的な弱者じゃない、精神的な強さがあることにも翔太というキャラクターの意義があると思います。とは言え、犯罪者になってしまっていますし、文化的に恵まれているかと言えば、そうではないんですけど。
——ご自身が俳優だからこそ、俳優を目指している翔太には、それほど悩むことなく役に入り込めたのですね。
村上 そうですね。そう言えば、撮影時にはクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)がまだ公開されていなかったんです。あちらも役者が役者を演じる映画でしたから、観ていたらむしろ彼をどう演じればいいかを迷っていたかもしれないですね。
また、僕は2世俳優(村上淳の息子)であり、東京出身であるため、確固たる地元がないんです。僕が演じた翔太も、そうした帰る地元がない、もしくは自分の成功を掴みきるまでは帰らないような性格のような気がしました。そこでも、翔太と僕は似ている気がします。
——劇中では、翔太が演技を怒られるシーンがありましたよね。あの“演技下手”の演技には苦労などはなかったのでしょうか。
村上 実は、僕にいきなりオーデションの話が来て、急に脚本を読んで覚えて演技しろって言われたことがあるんです。だから、あのシーンはある意味で僕の実体験なので、苦労はありませんでした(笑)。「こいつダセえな」って自分にムカつきながら演技できたのは面白かったですね。
参考にした作品はほぼなく、モットーは“やりたいことを思い切りやる”こと
映画『ソワレ』は、8月28日より全国にて公開。
村上虹郎 芋生 悠
監督・脚本 外山文治
配給・宣伝:東京テアトル PG12+
(C) 2020ソワレフィルムパートナーズ
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