百貨店跡「3度目の再生」に揺れる地方都市――巨大商業ビル「リムふくやま」は「平成の商業史」の縮図だった
中心市街地の大型店が苦境を極めるなか、広島県に「3度目の再生」を目指す巨大な商業ビルがある。
そのビルの名は「リム福山」。この8月30日に「3度目の閉店」を迎える。
時代に翻弄され続け、「平成の商業史」の縮図ともいえる巨大商業ビル。その歴史と今後を追った。
「リム福山」の建物は、もともと大手百貨店「福山そごう」として1992年4月29日に開業した。出店地はJR福山駅の西側、徒歩6分ほどの場所で、建物は地上9階・地下2階、店舗面積は34,440㎡(そごう27,222㎡)だった。
そごうはバブル期に全国各地の再開発計画地に目を付け、既存店舗の不動産資産を新規出店の資金源とすることで経営規模を拡大していた。この福山そごうも同様であり、福山市に本社を置き、同市の商工会議所会頭が経営する「山陽染工」跡地を再開発したもの。そごうはさらにJR福山駅ロータリーに面する「伏見町再開発」への参画・協力も表明することで、出店を決定的なものとした。そごうは出店地に本社を置く1店1社主義を掲げており、福山市に本社を置く百貨店は無かったため、市や商工会議所などもそごう出店を大いに歓迎したという。
福山そごうの出店が正式に決まった1988年はバブル景気の真っただ中であり、さらに福山市にはライバルとなりうる地場大手百貨店「天満屋福山店」(本社:岡山市)があったため、そごうの地方店舗のなかでも特に豪華で贅を極めた建物となった。
開業時のキャッチフレーズは「夢発信、素敵が集うミュージアム」。館内には、大都市の都心百貨店さながらのダブルクロス(4連)エスカレーターや金色のエレベーターが設置され、シャンデリアや人工河川、噴水、からくり時計などがある光景はまるで高級ホテルのようであった。
当初、そごうは想定商圏を「北は島根県松江市、南は愛媛県今治市まで」としており、年商は350億円・将来的には600億円台を目標にしていた。しかし、開業前にバブルが崩壊。さらに永年地元に親しまれており、JR福山駅の対面という好立地にある天満屋福山店の壁は厚く、実際の年商は200億円台に留まった。
1999年にはライバル・天満屋が福山駅から2kmほど東側に郊外型百貨店とショッピングセンターの複合店舗「天満屋ポートプラザ店」を出店。同年、福山そごうは大手百貨店としては珍しい「100円ショップ」の導入をおこなうなど経営努力を続けたが、そごうの経営破綻に伴い2000年12月に閉店、運営会社は破産することとなった。株式会社福山そごうの破産宣告時の負債額は約560億円であった。
なお、閉店後に一部のテナントはライバルであった天満屋へと移転した。そしてJR福山駅前の「伏見町再開発」は、そごう破綻後に選定された事業者がリーマンショックの影響で経営破綻するなどこじれにこじれ、2020年時点でも着工されていない。
バブル期に計画、バブル後に開業――計画未達に終わった百貨店「そごう」
「一度目の閉店」は2000年。負債額は約560億円
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