暑い夏のクールなデータ保存の話題。なぜ北極圏のスヴァールバル諸島がデータ保存の場所に選ばれるのか?

人類文明の財産を残すプロジェクト

 人類文明の財産を残すプロジェクトは、SF的ロマンに溢れる。しかし、実際に文明が崩壊したあとに、どこまでそのバックアップから文明を復元できるかは、困難な道に感じる。  文明は、土台の上に、新たな土台を積み上げて発展していくものだ。文明の崩壊と、バックアップからの復帰には、いくつかのパターンがある。 1. バックアップの価値が分かる人がいて、文明の土台がいくつか失われているが、その修繕をおこなえばパックアップが利用できる場合。 2. バックアップの価値が分かる人がいるが、文明の土台が失われすぎていて、パックアップが利用できない場合。 3. バックアップの価値が分かる人がおらず、文明の土台がいくつか失われている状態で、その修繕をおこなえばバックアップの価値に気づく可能性のある場合。 4. バックアップの価値が分かる人がおらず、文明の土台も失われすぎている場合。  1が崩壊の度合いが軽微で、文明の復元の可能性は高い。そして4が深刻で、文明の復元の可能性は低い。いずれの場合でも、バックアップの価値が分かる人がいれば、復元の可能性は高くなる。  近年、こうした「技術的価値が分かる人」が中心となり、文明を推し進める物語は、よく見られる。ネット小説で見られる異世界転生物には、こうした構造の話が散見される。また、アニメ化されたマンガ『Dr.STONE』もこうした系譜の作品だろう。  人類文明の財産を残すプロジェクトには、利用者側の啓蒙も必要になってくる。文明崩壊がいつ来るのかは分からないが、物理的リソースだけでなく、人的リソースの育成も必要だろうと感じる。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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