「妻のお前も組織の中にいるんだぞ」という職場の人間からの圧迫感
夫の職場の人間に感じた圧迫感も、うまく記事にしてくれた。
「夫が亡くなって財務局の方がウチに来られた時、『妻のお前も組織の中にいるんだぞ』っていう空気を感じて、息苦しかった」
こういう言葉は、一般紙では話しても使われなかったという。そして『フライデー』が写真誌としてこだわったのは、俊夫さんが命を絶つ時に使った
オーディオコードの写真だ。共著書の『私は真実が知りたい』冒頭にある序章の扉で使われている。だが写真誌としては、他の媒体に出たものとは違う写真にしたいものだ。編集者が私に尋ねてきた。
「あのコードの写真、別カット(別の撮り方をした写真)はありませんか?」
あった。雅子さん本人がコードを指差している姿が写り込んでいる写真だ。どこにもまだ出していない。でも、かなり生々しい。私は雅子さんに写真を見せながら尋ねた。
「この写真、『フライデー』に出してもかまいませんか?」
すると雅子さんはこう答えた。
「はい、出してください。この本を知ってもらうためだったら、私はかまいませんから」
普段は袋とじを撮っているカメラマンが赤木雅子さんを激写
専属カメラマンに撮影される赤木雅子さん
編集者のインタビュー取材が終わると、いよいよカメラマンによる撮影だ。写真誌が一番力を入れるところだろう。カメラマンが写真を撮りながら盛んに雅子さんに注文を出す。
「こちらを向いて。ちょっと向きすぎ、もうちょっとこちらに。はい、いいですねえ。もうちょっと体をねじって。スマホの画面に俊夫さんの画像を出していただけますか? それをこのあたりに掲げて。はい、そうです。ちょうどこのあたりに雑誌の折り目の線が来ますから、もうすこしこちらに寄ってください」
こんな感じで矢継ぎ早に注文を出すのだが、雅子さんは気分良さげに応じていた。私は横にいた編集者に尋ねた。
「あのカメラマンは『フライデー』専属の方ですか?」
「はい、うちの専属カメラマンです」
「ということは、ふだんは袋とじの撮影をしていると……」
「はい、もう数え切れないくらいの撮影をしています」
撮影が終わった後、雅子さんに聞いてみた。
「撮影どうでしたか? えらくいろんな注文が出ていましたけど」
「いや、確かにそうでしたけど、なんか気分良く撮ってもらえましたよ」
さすが『フライデー』専属カメラマン。女性をいい気分にさせて、いい表情を引き出すことにたけている。もっとも雅子さんの顔は出せないので、表情が写真でわからないのが残念だが、間違いなくいい表情をしていた。