109ナンバーワンブランド「セシルマクビー」が全店閉店に――背景には「ギャルのブランド離れ」も?

セシルも「変化」しようとしていた――パステルカラーのアイテムも?

「ブランドにこだわらないギャル」が増えるなか、セシルマクビーも客層を拡大すべく、徐々にブランドイメージを変化させつつあった。  2017年にはブランドコンセプトを「モテ服 No.1」としてアイドルグループ・乃木坂46の白石麻衣さんをモデルに起用。さらに2019年秋には「今の私にちょうどいい」を掲げ、ロゴデザインをシンプルなものへと一新。旗艦店であるSHIBUYA109店の店内も、セシルマクビーらしい「黒」を基調としたものから白を基調にしたものへと変わっていた。商品に関しても、近年は以前に比べて明るいカラーのものが増えており、どちらかといえば「原宿系」「青文字系」「カワイイ系」寄り、パステルカラーのアイテムも数多くラインナップされるようになっていた。  一方で、こうした客層拡大をめざしたブランドイメージの刷新は「カリスマ的ギャル系ブランドの迷走」として捉えられることもあった。先述の現役ギャルも「今のセシルは『量産系』ファッションと変わらんし……」と厳しい評価だ。
「旧ロゴ」(上)とシンプルな「新ロゴ」(左)が並ぶセシルマクビーの店舗

お馴染みの「旧ロゴ」(上)とシンプルな「新ロゴ」(左)が並ぶセシルマクビーの店舗。
以前と比べて「カワイイ系」「パステル調」が目立ち、ギャルからは「量産系ファッション」との声も…。

 セシルマクビーを展開するジャパンイマジネーションの売上高は、ピークであった2007年1月期が約242億円であったのに対し、2020年2月期は約121億円にとどまっていた。立て直しが必須となっていたなかでの新型コロナウイルス感染拡大は、「花形ブランド」に終わりの時を告げるのには十分すぎる禍であったと思われる。
「SHIBUYA109」

「SHIBUYA109」自体も2019年にポップなロゴへと変更。
館内をめぐると、数年前よりも「ギャル系ファッション」が減っている印象を受ける。

直営店から解き放たれたセシルマクビー、ライセンスで「多様化」も?

 一方で、今回の直営店閉店により「セシルマクビー」のブランドそのものが無くなる訳ではない。セシルマクビーはそのブランド力を生かして生活雑貨や文具、コスメなど、直営店外でのコラボレーション商品・ライセンス商品の展開もおこなっている。今後、セシルマクビーは直営店というかたちに拘らず、他社店舗へのライセンス付与によりブランドを維持していく方針だという。  今年、セシルマクビーが大手100円ショップ「セリア(Seria)」で「セシルマクビーブランドの100円コスメ」の販売を開始したことは大きな話題となった。「ファッションビルの一等地でカリスマ店員が接客する」という縛りから解き放たれたことにより、近い将来には現在よりもさらに多くの店、多くの場所で「セシルマクビー」のロゴを目にすることができるようになるかも知れない。 <取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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