「ちなみにいま企画があがっているのは『不動産内覧ツアーwith女子アナ』。女子アナと一緒に、新しい家探しのお手伝いをさせていただきます」
「忍者タクシー」「SPタクシー」のドライバーもつとめる広報の小関正和さん
また、積極的なSNS発信も同社の魅力のひとつだと小関さんは語る。
「2014年からYouTube配信を行っています。乗務社員たちが激辛料理を食べたり、小学校の入試問題を解いたりなど、『タクシー会社なのになんでこんなことをしているんだろう?』と思えるような動画をアップしていますが、すべてはタクシー運転手の採用活動が目的です」
新居探しに新しい風を送りこむ? 「住宅内覧ツアーwith女子アナ」
このようなユニークな取り組みは深夜番組『タモリ倶楽部(テレビ朝日)』に取り上げられ、SNSを通じて若者たちを中心に話題を集めた。小関さんは次のように語る。
「若い世代をターゲットにしたブランディングで、三和交通は『何か面白いことをやっているタクシー会社』として認識されるようになりました。この効果は、利用者の興味をひくだけではなく新卒採用にもつながっています」
コロナ休業による乗務社員のモチベーション低下防止にも
ところが、状況は新型コロナによって一変する。緊急事態宣言で利用客は一気に激減。これはタクシー業界に大きな打撃を与えた。三和交通においても一部営業所では完全休業、乗務社員の出番調整などの対応に追われた。さらに懸念されたのは、休業中のドライバーたちのモチベーション低下だ。
同社では、コロナ以前からコンディション管理システム
『jinjerワーク・バイタル』を活用。乗務社員のコンディションを定点観測し、些細な変化を捉えて対処することでモチベーションの維持につとめている。人事採用を担当する取締役部長の溝口孝英さんは次のように語った。
「休業中の乗務社員にその日のコンディションをお天気マークで回答してもらうことで、各自のモチベーションを分析。また、人事部でのみ閲覧できるコメントとして、現状の不安や問題を発信することも可能です。気軽に乗務社員の本音が聞けるため、ひとりひとりの変化を瞬時に発見できます」
一方、乗務社員側はどのように自身のモチベーション管理をしているのだろうか。自身で働き方を選べる自由な社風に惹かれて入社を決めたという、ドライバー1年目の神志那勇気さんに話を聞いた。
「会社では野球部に入っています」という、入社一年目の神志那勇気さん
「休業期間中は、社の仲間たちと励まし合いながら過ごしました。この管理システムでは会社の人に言いにくい相談事もコメントに記載できるので、弊社は乗務社員ひとりひとりをきちんと見てくれているんだな、と実感しました。まだ1年目で余裕がありませんが、今後は弊社で行っている車いすの方の送迎サービスを定期的にやっていきたいです」
ユニークな「アイデアタクシー」で他社との差別化をはかり、コロナ禍の厳しい経済状況の中で生き抜く策を模索している三和交通。今後の動向に注目だ。
<文・写真/櫻井れき 写真提供/三和交通 ネオキャリア>