「有事の金」は本当か? コロナ禍の中、40年ぶりの史上最高値更新の「金」の投資戦略とは
新型コロナの感染拡大で世界経済の悪化が確実視されるなか、コロナショックからいち早く抜け出し40年ぶりに史上最高値を更新した金。かねてから戦争や自然災害など「有事」に強いと謳われるが、今回、そんな金の投資法を探った。
コロナショックで金融市場が混乱するのを尻目に、金が力強さを見せている。5月18日、金スポット価格は1トロイオンス=1764ドルと、’12 年10月以来、7年半ぶりの高値をつけた。これに先立ち、円建て金も13日、6513円に値を上げ、実に40年ぶりに過去最高値を更新している。
3月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界各国で経済活動が停滞。景気減速への不安から、世界中の株式市場が急落した。16日、NYダウが過去最大の2997ドルも暴落。FRB(米連邦準備制度理事会)は前日に大規模な金融緩和に踏み切ったが、市場のパニックを抑えられず、2月に史上最高値を記録したばかりのNYダウは、わずか1か月で約30%も下落した。
一方、株価とは逆相関の関係にあるといわれる金は、どんな動きを見せたのか。金のディーリングに精通する日本貴金属マーケット協会代表理事の池水雄一氏は、こう説明する。
「NYダウが最大の下げを記録する前の3月11日、いわゆる“有事の金”買いが入り、株価が下落するのとは反対に1690ドルまで値を上げたが、14日には1450ドルまで下落。その後、株価が連日下げると、金に限らずすべての金融商品が売られた。投資家が現金化を急ぎ、売れるものはすべて売る“セル・オール”になったのです。こうしたことは市場がショックに襲われたとき、しばしば起きている」
金の逆相関の値動きは、ドルとのあいだでも顕著だ。楽天証券経済研究所の吉田哲氏は、こう続けた。
「ドルも金も、“万国共通の通貨”という側面を持っています。ドルは現在、世界の貿易の決済でもっとも多く使われる基軸通貨であり、金は歴史的にどこの国でもお金に換えられる無国籍通貨です。そんなドルと金(ドル建て)の値動きは逆相関になることがある、実際、3月2週目はドル高・金安だったのが、3月19日にはドル安・金高に反転している。危機が発生した際、金でさえ売られたのは、リスク資産から手を引き、ドルを手元に戻す換金売りが生じたからです。同様のことは、リーマンショック時にも起きている。ただ、“総悲観”によるドル買いはやがて一巡し、先進国が景気悪化を食い止めるため、金融緩和策を打ち出し、過去にない規模で財政出動を開始した。こうして市場は“総悲観”から立ち直り、3月末にはドル安に呼応して、金は1700ドルの水準までV字回復したのです」
では、世界の市場が金融システム不安に陥った’08 年のリーマンショックのときはどうだったのか。マーケット・ストラテジー・インスティチュートの亀井幸一郎氏は、こう振り返った。
「’08 年3月にNY金は1000ドルの大台を超えたが、同年9月にリーマンショックが起こり、今回と同様に投資家が現金化に走り、金は急落しました……。その後、未曽有の金融危機に対して米FRBが量的緩和策(QE。第3弾まで続く)を開始すると、世界中にマネーがじゃぶじゃぶにバラ撒かれた。その後3年間は一本調子に金は上昇し、’11 年9月6日に史上最高値の1923ドルを付けたのです」
チャートを見ても、リーマンショック後、金価格が急角度で駆け上っているのがわかる。
金は史上空前の財政出動で天井知らずで上がり続ける
リーマンショック時も急落後3年は一本調子で上昇
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