地主が土地利用を拒否も事業者が強制収容を申請、都は受理
5月27日の記者会見。左から原告の山田耕平さん、國井さわ美さん、籠谷清さん。右の2人が弁護士
籠谷さんたちは同日、提訴に次いで記者会見を開催した。会見に臨んだのは、3人の原告と2人の弁護士。このなかで筆者が関心を持ったのは、原告の國井さわ美さんだった。
「おおむね地下40m以深の大深度においては、地主への交渉も補償も不要」と書いたが、トンネルが一時的に地上に出る際には当然、地下40mより浅い区間(「浅深度」と呼ぶ)ができる。
浅深度の上に住む地主には「区分地上権」という土地の権利が認められ、事業者は土地利用について地主から了解を取らなければならない。
事業者は土地利用の了解を國井さんに求めているが、國井さんは拒否している。國井さんが拒否し続ける限り、その区間での掘削・使用はできないことを意味する。
そこで事業者は、その区間を強制収用するべく東京都収用委員会に使用の決裁を申請。果たして2019年11月6日、収用委員会が事案を受理した。
國井さわ美さん
籠谷さんによると、期日は未定だが収用委員会が「一度だけ」公聴会を開催して、すぐに裁決を下すというセレモニーのような手続きがなされるという……。
それでも國井さんがこの問題に反対し続けるのは「
国交省もNEXCOも責任感ある説明を住民にはしてくれません。何を質問しても、答えられない質問には『持ち帰ります』というだけで、結局何の回答もない。私たちの生活をあまりにも軽視するその姿勢に『違う』と言いたい」からだ。
記者会見の席上で籠谷さんが採取した酸欠空気を測定したところ、6%台だった
記者会見の席上で、籠谷さんは川でペットボトルに採取してきた気泡の酸素濃度を計測器で測った。最初は約21%あった数値がみるみる下がり、最終的には6%台を示した。
山田耕平さん
もう一人の原告である山田耕平さんは、自宅の真下を大深度でトンネルが通ることに不安を覚えている。
「私の地域では掘削はまだですが、もしシールドマシンが近づいて来たら、酸欠空気がトイレや浴槽、排水溝などから漏れはしないかと不安で、子どもたちを寝かせられません。今すぐ工事を中止すべきです」(山田さん)
住民の不安を無視したままに工事が強行されようとしている。事業者はまず、住民に向けて詳しい説明をするべきではないだろうか。
<文・写真/樫田秀樹>