合衆国、英国、スウェーデン、イタリア、スイス、フランスに韓国、日本を加えた1000人当たりのPCR検査日毎実施数の推移(7日移動平均) 合衆国は世界的に高密度のPCR検査を行っている。最高密度はバーレーンで、1000人当たり4〜5人を継続している。 日本の6/18-24は、6/18にそれまで漏れていた検査数を加えたことによる統計の揺らぎである Our World in DATAより
このトランプ氏の発言は、合衆国の医療関係者、保健当局者に激震となり、猛烈な批判の集中豪雨となり、共和党内ですら批判が出る有り様でした。
脳外科医・医学研究者でありCNNの医療報道担当であるサンジェイ・グプタ医学博士は、終始怒り心頭で、次のように酷評しました。
「砂に頭を突っ込むようなものだ」(Ostrich Head in Sand。ダチョウ=Ostrichは危機が迫ると頭を土に突っ込んで安心するということわざで無能な臆病者を示す。実際のダチョウはそのようなことをしない)
また、日本を除く世界の医療関係者は、即座に次のように酷評しました。
「検査が感染者を増やすのでは無い、感染者を増やすのはウィルスだ。」
毎日PCR検査を受け陰ではマスクしながらデマを喧伝するプレジデント
よく知られるように、ペンス副大統領の補佐官が感染し、ホワイトハウス内でのアウトブレイクが懸念された結果、5/8以降、トランプ氏、ペンス氏は、毎日PCR検査を受診しています。またミシガン州イプシランティでフォードのマスク工場視察の際にトランプ氏はメディアの前でなければマスクを着用することを激写されて”TRUMP’s MASK”とCNNなどで報じられています*。
〈*Photo shows President Trump wearing mask while touring Ford plant in Ypsilanti 2020/05/22〉
自分自身は、人前でなければマスクを着用し、毎日PCR検査を受診する(現在、ホワイトハウスには独自のPCR検査室があるとされる)ことで厳重な医療体制に自分自身は守られながら反科学的な発言でパンデミック対策を妨害し続ける無能で卑怯で臆病なリーダーシップの欠けた大統領という酷評は、民主党、リベラルだけでなく共和党にも広がりつつあり、トランプ大統領の支持率は、選挙に弱いとされた“失言の”バイデン氏に大きく引き離されています*。
〈* 2020/06/27 CNN 番組 Inside Politics によると、トランプ氏の支持を明確にしてきた保守系の FOX News 6/13-16 世論調査ですらバイデン氏がトランプ氏に+12%と大幅に支持率で引き離している〉
タルサでの集会は失敗し、しかも共和党陣営スタッフに感染者が8名発生、シークレットサービス室の職員にも2名の感染者が出た結果、ホワイトハウスのシークレットサービスは数十人(Dozens)が自己隔離に陥るなど、深刻な後遺症を残しています*。
〈*トランプ氏、3カ月ぶり選挙集会も会場に空席目立つ 直前には陣営スタッフの感染確認2020/06/21 BBC:大会後感染者は10名に拡大、シークレットサービス室員が2名含まれた〉
その後もトランプ氏は検査抑制を演説し続け、遂にウィスコンシン州の造船所では、次のように演説しました*。
「(パンデミックについて深刻だと)メディアが報じることは、フェイクニュースだ」
聴衆(造船所労働者)呆気にとられ沈黙と笑い。
「合衆国は偉大な検査を行なっている。検査をすれば感染者数が増える。検査は減らさねばならないのだ」
また、遊説先では次のような発言もしています。
「検査をしないことで感染者を減らしている国もある」(明らかに日本のこと)
〈*New coronavirus spike alarms Republicans, but not Trump 2020/06/25 Los Angeles Times、President Trump stumps in Wisconsin 2020/06/26 KRQE News 13:ウィスコンシン州におけるトランプ氏演説の動画を見ることができる〉
このような発言は、日本の医者や日本の「論客」以外に支持者が出るわけもなく、発言するごとにホワイトハウスは火消しに走り回り、厳しい批判を浴び、パンデミック再加速に苦しむ南部諸州というトランプ氏の支持基盤も切り崩して行く結果となっています。
人目に付かないところでは自分自身はマスクを付けながら、市民にはマスクは必要ないという誤ったメッセージを発し続けるためにトランプ氏の政治集会でのマスク着用率は極めて低く、しかもパンデミックが拡大する中心である南部を遊説するために、トランプ氏は、パンデミックの運び屋かパンデミックを運ぶコウノトリの様相を示しています。
新型コロナウィルスによるパンデミックが始まった1月から3月にかけてトランプ大統領は、パンデミックを「フェイクニュース」と言い続け、初動に失敗したことは広く知られています。ファウチ博士、調整官であるバークス博士らの尽力によってトランプ大統領も3月中旬には事態の深刻さを理解し、対策の効果は目覚ましいものでした。
ところが4月に入ると経済優先政策を打ち出し、結果として事実=数字を無視した拙速な社会的行動制限解除を行い、ファウチ博士らを意思決定から排除し、5月にはコロナ対策タスクフォース解散騒動まで起こしました*。
〈* ホワイトハウス、ウイルス対策チームの解散を検討-ペンス副大統領2020/05/06 Bloomberg、 トランプ大統領、ウイルス対策チーム維持-解散示唆した前日から反転2020/05/07 Bloomberg
そして予想され、指摘されてきた通り、6月に入りパンデミックが再開し、世界でも最悪の部類に入るとまた、「フェイクニュース」という言葉を乱発するようになりました。
その一方で、2020/06/23下院公聴会では、CDC所長のロバート・レッドフィールド博士は次のように発言しました。
「我々は、できる限りのことはした。しかし我々はウィルスに敗北しつつある。」*
〈*CDC所長、「米国は新型コロナに屈服」 半分の州で感染者急増2020/06/24 CNN〉
現在合衆国では、このパンデミック対策の失敗は、リーダーシップのない異常で利己的な大統領の責任であるとする論調が広がっています。筆者は、クリントン政権一期の頃からトランプ氏を比較的好意的に見てきましたが、こんな醜態をさらすとは思っても居ませんでした。
合衆国共和党は、レーガン政権の頃から宗教右派、反科学政党としての性格がちらほら見え始め、とくに2008年大統領選以降は宗教右派、極右、反科学を露わにしてきましたが、それらによってコロナウィルス・パンデミックで失敗を繰り返し、世界最強の医療大国を脆くも崩壊させてしまいました。
ここで2020/06/26のCNN朝の番組NEW DAYでインタビューに応じたビル・デブラシオ市長が終始カチホコ笑顔の中、真顔で語った言葉の要約を繰り返します。
”パンデミックとの闘いは、数字だ。事実は数字として表れる。そして数字は遅行指数であって、二週間前を表す。我々は、数字を正視して闘ってきた。数字を正視しなければ失敗する。我々は地獄を見た。そして現実=数字を常に正視することをやめずに闘い、地獄を脱し、経済再開にむかって慎重に進んできた。そして、マスクの威力は絶大だった。ホワイトハウスは敵対的で何も助けてくれなかった。”
パンデミックとの闘いに必要なのは現実=数字を正視することです。そして正攻法、WHOやコロナ対策タスクフォースの指示に則り、徹底した検査と隔離、追跡、治療を行い、社会的活動制限を厳格に行い、マスク着用を怠らず、数字=事実を正視しながら慎重に活動再開を行うことのみが成功への道です。珍奇なアイデアや工夫は全て失敗への滑り台であり、王道や抜け道はありません。