沖縄・辺野古にジュゴンは戻っていた! コロナで中断していた新基地工事再開に懸念

「工事はジュゴンに影響しない」という沖縄防衛局の主張が揺らぐ

 今回の鳴音検出を受けて、沖縄県は沖縄防衛局に対して工事を停止し、工事によるジュゴンへの影響の再評価を求める行政文書を4月17日に出した。6月4日、この文書に対して回答を求める行政指導を再度行ったが、工事は再開された。 「ジュゴン保護キャンペーンセンター」国際担当の吉川秀樹さんは「『ジュゴンは大浦湾を利用しない、工事はジュゴンに影響しない』と主張してきた沖縄防衛局の立場が揺らいでいます。防衛局はジュゴンの鳴音が確認された後も工事を継続していますが、『ジュゴンへの影響の再評価の必要がない』とするのは、工事による影響を認めれば工事強行の根拠を失うからです」と指摘した。  さらに「IUCNは、生物種の絶滅危機について調査・評価を行う国際的な最高機関。そのような権威ある機関が沖縄のジュゴンを『近絶滅』と評価したにもかかわらず、この評価についてこれまで環境監視等委員会の議題にもあげていません。これは国連の言うことを無視しているようなものです」と厳しく批判した。

辺野古・大浦湾はジュゴンにとって貴重な「生息地」

辺野古・大浦湾

辺野古・大浦湾。筆者が訪れた前日にも鳴き声が検出されていた(写真/筆者 2020年2月12日)

 ジュゴンの体重は250〜400kgで、浅瀬に生える海草(うみくさ)を食べる。1日に食べる海草の量は体重の4〜25%といわれる。仮に300kgのジュゴンが体重の10%の海草を食べるとすると、30kgもの海草を毎日摂取することになる。  ジュゴンは一日の時間のほとんどを、餌を食べて移動することに費やすといわれている。ジュゴンのような海洋哺乳類にとって、餌場として利用する場所や移動する海域は「生息地」を意味する。海草が茂る藻場は「海の草原」とも呼ばれる。IUCNによると、辺野古・大浦湾には沖縄島東海岸の海草藻場の3割の面積が集中している。  ジュゴンは音に敏感な生き物だ。工事再開によって生息地に近づけなくなり、さらに工事自体で海草藻場が失われれば、すでに絶滅の危機にあるジュゴンはより深刻な事態にさらされる。
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「ジュゴン調査計画」を国際的な専門家らが提案
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