事実、コロナ禍でも勝ち組として輝かしい戦績を残しているトレーダーを取材すると、世論の一歩先を行く立ち回りで上手に利益を上げているケースに多くつき当たった。
「普段は現金比率5割ほどで運用していますが、景気後退の気配を感じ、コロナ禍では資産の8割が現金だったので、慌てずに済みました。3月の暴落局面ではイオンフィナンシャルサービスを購入し、20%ほど利益がのっています」(弐億貯男氏)
「2月、コロナによる本格的な大暴落の恐怖を感じ、利益が伸びていた主力銘柄も手放すことに。キャッシュを90%にまで増やし、ダメージを最小限に止められた。大底で株を仕込むことはできませんでしたが、結果としてコロナ前より資産は2000万円ほど増えています」(はっしゃん氏)
このように投資家たちはそれぞれの戦略でこの荒波を乗り切っている。今回は、はっしゃん氏の話を深堀りしてみよう。
「反省点はありますが、全体を通して見ると新型コロナウイルスによる経済的な被害はほとんどなく、むしろコロナを通じて順調に資産を増やすことができました」
そう語るのは、投資歴20年を超えるベテラン投資家のはっしゃん氏(前出)。業績予想から導き出される理論株価を売買基準とし、成長株への長期投資を中心に、これまでに築いた資産は3.5億円にのぼる。
「コロナ以前は主力銘柄を3つに絞って運用。’19 年には、そのうちの一つが700%近い運用利回りを記録するなど絶好調でしたが、コロナ直前に材料が出尽くしてしまった影響で想定以上の下げ。 早めに売り抜けました。コロナと時期が被ればさらなる減益は必至だったと思うので、かえって幸運でした」
ほかの2銘柄に関しても、10~12月の決算が良かったにもかかわらず、直後の株価上昇が芳しくなかったことに違和感を覚えた。
「2月初旬、コロナの脅威がここまでとは思ってもいませんでしたが、株価に影響を与えている材料はコロナのほかに考えにくかった。『これからもっと大変なことになる』と、本格的な下落の予兆をはっきり感じ、残りの主力銘柄に関しても前向きに利益確定することにしたのです」