対面でもリモートでも、
指示・命令をしても部下や後輩が動かないケースでは、部下や後輩の意見を聞いていないケースがほとんどだ。意見を聞くには、質問をすればよい。
異論や懸念を洗い上げ、最も深刻な異論や懸念を掘り下げ、ある前提をおいて方向性を示唆し、まとめていく。それには「
洗い上げ質問」「
掘り下げ質問」「
示唆質問」「
まとめの質問」が有効だ。
指示・命令をしたうえで、これらの
4つの質問を繰り出すことで、部下や後輩を巻き込みやすくなる。4つの質問のなかで、難易度が高いのが、示唆質問だ。例えば最も深刻な異論や懸念が「人手が足りないから、その指示・命令を実施できない」「現行業務でスケジュールがいっぱいなので、新しい指示・命令に時間が避けない」というものだったとする。
これらの場合、「人手が足りないのはどのチームも同じだから、がんばれ」「スケジュールを工夫するのが君の仕事だ。四の五の言わずにやれ」というように指示・命令を重ねる代わりに、「
仮に、ほかのチームから一時的に応援してもらうことができたら、試しに実施してみますか」「
例えば、現行業務も含めて、スケジュールの再検討をする前提だったら反対しませんか」というように繰り出すのが、示唆質問だ。
示唆質問が思い浮かばなかったら、
どういう前提だったら実施できそうか、部下や後輩に聞いてしまえばよい。部下や後輩に聞くなんて、上司や先輩の沽券にかかわると思うから、部下や後輩を巻き込めないのだ。それさえも
部下や後輩に聞くことで、巻き込みはさらに加速するのだ。
質問:示唆質問が思い浮かばない
示唆質問では、
ある前提を置いて方向性の示唆を繰り出すわけですが、その前提が思い浮かびません。結局、議題についてどの参加者よりも熟知していないと進行役は務まらないのではないでしょうか?
回答:示唆する方向性を相手に聞いてしまえばよい
示唆質問である前提を置いて方向性を示唆する内容が思い浮かばなければ、最も深刻な問題を提起した人に、「
どのような前提であれば、賛成ですか?」「
どのような前提であれば、少なくとも反対しませんか?」というように、
合意してくれる前提を聞いてしまえばよいのです。
もちろん、その答えが前提として許容できるか、現実的に可能かどうかはわかりません。答えてくれた内容のなかから、方針説明者や進行役が前提としてふさわしく、
現実的に可能だと思える回答を選んで、前提にしていけば方向性を絞ることができるのです。
つまり、質問による合意形成の
進行役は、参加者に質問していって進行していく役割を担っているだけですから、
議題についてどの参加者よりも熟知していなければ務まらないということはないのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第194回】
<取材・文/山口博>