日本は超監視社会への途を歩むのか。成立したスーパーシティ法案の問題点と法成立後の課題。

杭州のスマートシティの評価と中国と日本の地方創生に関する覚書

 国会審議では、中国の杭州の現状をどう見るかも議論された。自民党の片山さつき氏は、杭州市をスマートシティの成功例として指摘した。村上敬亮審議官は、杭州について「既に二千台以上のサーバーと四千台以上のカメラという膨大な端末をしっかりと渋滞管理や救急車両通行の円滑化などにきっちりと使えて運行実績があると。これだけの膨大なシステムを都市管理できちっと動かしているというところの技術的な先進性というんでしょうか、実績性というんでしょうか、その現場を見たいという思いで私自身も調査団の一員として杭州に行かせて参りました。」と答弁している。まさに、杭州市を絶賛しているのである。しかし、本当に中国・杭州はスマートシティの成功例と言い切れるだろうか。中国では民族的な少数者や政治的反対派は、この監視社会システムによって抑え込まれていることは動かせぬ事実である。  片山さつき前大臣中国の国家発展改革委員会のトップとの間で、地方創生に関する日中両国の協力を強化しようと、地方創生の分野で協力するための覚書が交わされている。片山さつき前大臣は昨年8月に、中国に赴き現地調査を行った。共産党の大門実紀史議員の質問に対して、政府は中国政府幹部と二国間で対話をしていた際に、先方の幹部との間で協定締結の話があり、その後、協議を経て2019年8月30日に「地方創生の協力の推進に関する覚書」を締結したと答弁している。今後は内閣府地方創生推進事務局と中国国家発展改革委員会の担当部局の間で定期的に協議をするとされていたが、現在は中断している。その片山元大臣が自民党を代表して、この法案賛成の立場でこの法案の質疑を担当した。  大門議員は、この法案の下で、杭州のアリババ、トロントのグーグルなど巨大IT企業の情報支配による究極的な監視社会が日本でも現実のものになるのではないかという危惧を表明した。  日本はどちらかといえば、プリズムエックスキースコアなどに代表されるアメリカを盟主とする世界的な監視システムの下に統合されているように見え、中国の監視システムが直ちに日本に導入されるとみることができるかどうかは即断できないが、いずれにしても中国型かアメリカ型かは措くとして、この法案が日本の監視社会化を推し進めるものであることは疑いがない。スーパーシティ法案は、住民自治や民主主義に基づく決定や運用が担保されている法制度になっておらず、市民のプライバシーの権利をまるごと奪ってしまう危険性があるのである。

急速に盛り上がった法案への疑問

 衆院段階の審議は、4月2日に本会議の質問が行われたが、ほとんどメディアにも取り上げられず、あっという間に4月16日には衆院で法案は可決されてしまった。  参議院における本会議では、5月13日に始まった。福島みずほ社民党党首が立憲・国民、新緑風会・社民共同会派を代表して質問し、「現実には住民のためのものでなく、自治と公共性を破壊し、プライバシーのないミニ独裁国家を生み出そうとする法案です」「住民の情報を吸い上げて大企業が潤う構造のスーパーシティ構想は、憲法にも法律にも反し、住民のためにならない」と反対意見を述べた。  その後、15日と22日に「地方創生及び消費者問題に関する特別委員会」での審議がなされた。その内容は上記に紹介したが、短い質疑ではあったが、充実した審議がなされ、この法案の問題点が浮かび上がったといえる。  5月26日のテレビ朝日の報道によれば、政府関係者は、「個人情報保護の件は、与党が割れる可能性だってあると思うが、与党も実際のところよく分からないで賛成しているのではないか?」と述べたという。まさに、大きな問題を残したまま、委員会の審議が打ち切られ、法律案は成立してしまった。
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コロナ対策と監視社会化
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