次に②です。眉が
弧を描いています。眉が引き上げられると額に水平のしわが出来、眉が弧を描くのです。
実は、眉の形自体は何の感情も抱いていていないときとほぼ同じなのですが、眉が上に動く様子は容易に気づくことが出来ます。これは、
驚きか興味・関心です。特殊な 場合を除いて、どちらかを区別する必要はありません。どちらとも「
知りたい」という思いの現れです。
続いて③です。眉が
ハノ字です。眉の内側が引き上げられると額に山状のしわが出来ることがあり、眉がハノ字になります。これは、
悲しみです。
最後に④です。眉が
カギ型です。眉が中央に引き寄せられかつ引き上げられると額に波状のしわやΩの形をしたしわが出来ることがあり、眉がカギ型になります。これは、
恐怖です。
クイズBを通じて、
マスクをしていても鼻から上の表情から感情を推測することが出来るという感覚を抱いて頂けたと思います。ところで、さきに「目周辺や目の動きのみから感情を推測することは難しい」と書きましたが、幸福感情だけは例外です。次の画像を見て下さい。
右の表情全体の画像を見なくても、左の目周辺のみの画像で幸福はわかる
幸福表情は、頬が引き上げられることで目が細くなり、目尻にカラスの足あと状のしわが出来るため、目周辺部のみから幸福感情を抱いていることが推測可能なのです。
マスクを着けていても、いつも通りのコミュニケーションを意識しよう
さて、眉から表情を読むポイントを説明してきましたが、逆の立場から考えることも大切です。つまり、眉の動きだけで感情が伝わることがある、伝えることが出来るということです。マスクを着けているため「相手に表情は見えないだろう」と油断して、動きのない表情でコミュニケーションをしていたら、心までも動きが鈍くなってしまいます。表情と感情と行動は連動しており、表情は感情が入る器でもあるのです。ウィルス拡散・侵入防止のためのマスクの中に感情まで閉じ込めてしまう必要はありません。
次からマスクを着けている方とコミュニケーションをするとき、相手の方の眉をちょっと気にしてみて下さい。無表情だと思っていた顔から感情の彩を感じとることが出来るでしょう。そして、マスクを着けていても感情は伝わるのだと思いながら、いつも通りの表情を気にかけてみて下さい。
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<文・図版/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。