今こそ学べるゾンビ映画3選。人の善意も利用するウイルスの恐ろしさとは
1:『28週後…』(2007) 善意さえもウイルスにとっては好都合かもしれない
全力疾走するゾンビたちが襲いかかる、残酷描写とホラーテイストの強い作品だ。『28日後…』(2002)の続編であるが、物語やキャラクターはほぼ独立しているので、そちらを観ていなくても楽しめる。幼い姉弟と彼らを守ろうとする大人たちの逃避行には、シンプルにハラハラできるだろう。後に『アベンジャーズ』(2012)でもメインキャラクターを演じるジェレミー・レナーが、お調子者だが理性的な軍人に扮しているのも面白い。
オープニングは薄暗い家屋での籠城、そして大量の凶悪なゾンビからの命がけの逃避という苛烈なシーンから幕をあけるが、メインで描かれるのは「感染拡大が一旦は収まった後」の物語であるということが重要だ。イギリス本土が壊滅状態に陥ったものの、生き残った市民は国外への脱出に成功し、5週後にはゾンビたちは餓死。安全宣言が出されたロンドンでは軍の監視下のもと復興が進んでいる……という状況なのである。
そして、劇中では「善意による行動がさらに事態を悪化させる」という悲劇がいくつも提示されることになる。観てほしいので具体的には書かないでおくが、例えば生き延びた父親の“愛情ゆえの行為”が、一旦は収束したかに思えたウイルスの感染拡大の第2波の原因となり、封じ込めに失敗、尋常ではない被害をもたらすことになるのである。
この悲劇が起こったのは、劇中のある人物がウイルスに感染したもののゾンビにならなかった、つまり無症候性キャリアであったことが理由だ。ご存知の通り、実際の新型コロナウイルスも感染しても症状が出ないことが多く、だからこそ誰もが自覚なしに感染を広げてしまう可能性がある。それこそ、十分な対策をすることなく好きな人や家族に会いに行く、経済的に困窮している施設や観光地に訪れるといった、まさに善意による行動のために……。ゾンビのように症状が明白なものよりも、むしろ無症状のほうが感染拡大のリスクが高いのかもしれない、ということに改めて気づかされるのだ。
『28週後…』で描かれる「善意による行動がさらに事態を悪化させる」というのは、凶悪なウイルスのある種の真実。ウイルスにとって、人間の善意はパンデミックのためには好都合と言い換えてもいい。それを認識し、気を引きしめることがことができる本作を、ぜひ観ていただきたいのだ。
2:『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016) 社会の縮図と差別をする人間の本性がわかる
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