最近、そごうや西武百貨店のレストラン街で「空き店舗」や「改装中」の店舗が目立ったり、飲食以外のテナントで埋めている店があることに気付いた人も居るのではないだろうか。
もちろん、4月現在は飲食店舗の多くが新型コロナウイルスの影響で時短営業などになっているのだが「空き店舗問題」はそれより前、2019年秋から発生していた。
実はこの問題には「かつて西武セゾングループだった歴史的企業の大再編」が大きく関わっていたのだ。
かつて西友と同じ「西武セゾングループ」だった大手ファミレス「CASA」。
懐かしい!という人も多いであろう
西武解体から数奇な運命を辿った「西洋フード」の再解体
2020年8月末に閉店予定のそごう徳島店。まだ閉店には時間があるものの、2019年末にはレストラン街の殆どが空き店舗となっており、人の姿はまばらだった。
この「空き店舗問題」の発端となっているのが、英国コンパスグループの日本法人「
西洋フード・コンパスグループ(旧西洋フードシステムズ)」と傘下の「
エムエスエル(旧森永フードサービス)」の事業再編だ。
かつての国内有数の巨大企業集団「
西武セゾングループ」の大手飲食店グループとして名を馳せた「
西洋フードシステムズ」は1947年9月、
森村武次郎により「
キンケイカレー」を手掛ける荏原食品工業として創業。同一の創業家(森村家)を持つエバラ食品や平和食品工業と緊密な関係にあったが、
1975年には経営悪化を機に西武セゾングループの傘下となり、1976年に「
レストラン西武」と合併。西武百貨店や西友のレストラン街を中心にらーめん店「
京らーめん糸ぐるま」やファミリーレストラン「
CASA」(カーサ)など多くの業態を展開し、その後1989年10月には「
西洋フードシステムズ」に社名変更。バブルの勢いに乗り、全国各地に様々な業種の飲食店を展開する一大飲食店グループとなった。
2001年には経営破綻した旧そごうグループの「
そごう商事」からとんかつ専門店「
双葉亭」、和食店「
四季」など自社グループ店舗や繁華街で営業していた飲食事業を取得し更なる事業多角化を推し進めたものの、今度は西武セゾングループの経営再建に伴い、2002年1月から英国企業「
コンパスグループ」の傘下に入り現在の社名に変更。以降は経営規模を大幅に縮小していくこととなる。
そごう呉店・川の流れるレストラン街。
そごうグループ運営の多くの飲食店舗も西洋フード・コンパスグループとなっていた
2007年8月には主力業態であったファミリーレストラン「
CASA」の大部分(主に百貨店内以外)や、居酒屋「
藩」「
居食処 博多五風」「
京らーめん 糸ぐるま」などのレストラン事業約120店舗を「西洋レストランシステムズ」に分社化し、
モルガン・スタンレー証券と
オフィス井上に売却、のちに居酒屋チェーン大手の
「川中商事」(現・アンドモワ)に売却された。そして、西洋フード・コンパスグループはオフィス・工場を始めとする各種事業所の社員食堂運営受託、宿泊施設・公的施設・保養所・研修所・高速道路のSA・PA、給食、百貨店内テナント店舗の運営受託を中心とした事業展開に移行した。
西洋フード・コンパスグループが継続して運営した百貨店内テナント店舗に関しては、レストラン事業分社化もロードサイド型店舗と共通ブランドで営業を行っていたが、商標等の関係などから、西洋フード・コンパスグループ直営の「
CASA」を「
CASA Grande」に、「
小吃坊」を「
皇雅」に、「
双葉亭」を「
○かつ亭」に変更している。つまり近年「CASA」に関しては、見た目がほぼ同じでも「CASA」と「CASA Grande」で運営企業が異なる状況となっていた。
かつて大手ファミレスとして親しまれた「CASA」。
(西武大津店、事業再編により2019年に閉店)
今回のレストラン街店舗の大量閉店の発端は、
西洋フード・コンパスグループの事業再編で百貨店内テナント店舗以外の殆どの事業が譲渡されたことによるもの。
西洋フード・コンパスグループの事業のうち「スポーツ施設およびレジャー施設におけるレストランその他の飲食提供業務および宿泊業務に係る事業」が「エスエスエル」に吸収分割承継、外食大手「クリエイト・レストランツHD」に2019年9月1日に経営譲渡され、それ以外の店舗のうち「百貨店内テナント店舗」はすべて閉店されることとなったのだ。
なお、西洋フード・コンパスグループの大部分を引き継ぐことになった「クリエイト・レストランツHD」は1999年5月に創業(2010年に持株会社制に移行)した外食大手。「マルチブランド・マルチロケーション戦略」を掲げ、百貨店やショッピングセンターにしゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶ菜」、自然食レストラン「はーべすと」、クレープ・タピオカ専門店「デザート王国」など222ブランド925店舗を展開している(2019年2月末現在)。
今後「西洋フード・コンパスグループ」は社員食堂・給食・高速道路SA・PAの運営受託などのみをおこなうこととなり、もはやかつての「国内大手」の面影はほぼ無くなってしまう。
かつて国内大手の飲食グループだった「西洋フード」だが、今後は社食やサービスエリアの店舗のみとなる。(そば処信濃東名海老名SA下り店)