2016年のリオ五輪でも使用されたカーニバルのサンバ・パレード専用会場。コロナウイルスの感染はリオ市でも4月から拡大。写真に見えるスタンド席下のVIPルームは路上生活者の感染対策保護施設になっている
2月後半に開幕し、3月1日に閉幕した2020年のリオのカーニバル(カルナヴァル)は過去最高210万人の動員を記録した。カーニバルの規模と動員はギネス記録、そして歴史を持つ「地上最大のスペクタクル」と呼ばれて久しい。
毎年、世界中から観光客とメディアが押し寄せる世界的な風物詩だ。リオデジャネイロ州と同市は、コロナウイルスの感染拡大を懸念し万が一に備え、感染者収容施設を準備して臨んだ。
しかし3月下旬になっても、南半球最大の都市サンパウロに比べると、ブラジル第2の都市リオデジャネイロの感染者数はとても少なかった。感染拡大を恐れ、リオ州知事は3月第2週に緊急事態宣言し、外出制限を敷いて翌週にロックダウンした。
3月中旬はカーニバルを締めくくり、伝統と格式ある各部門表彰アウォード「Estandarte de Ouro」の授与セレモニー(ブラジル最大手新聞『O GLOBO』紙による、カーニバルのメインイベント=巨大なパレード・コンテスト上位2リーグに対するもの)も中止(未定延期)となった。当然、リオに限らずブラジル全土で、スポーツや音楽などすべての大型イベントは再開のめどが立っていない。
4月に入ると感染者数は増え続け、4月下旬になるとリオ市〜リオ州でも感染者数が一気に拡大している状況だ。美術的なカーニバル史を飾る世界的な振りつけ師、日本でも知られる大名曲の作曲家、テレビ番組でお馴染みの若手人気サンバ歌手など、次々とコロナウイルス感染のニュースが駆け巡っている。筆者は友人を1名コロナウイルスで失った。
一方、ボルソナーロ大統領の失政はコロナウイルスへの対策にも大きく表れ、世界中に報道されているが、ブラジル国民の不満はSNS上でも爆発している。4月末にはパンデミックに対する相次ぐ失政と大臣の更迭や辞任で、ブラジル通貨レアルはついに1レアル=20円を切った。
さて、本記事の軸は「人類史上類をみない多国籍移民・混血大国を象徴するリオのカーニバル」とその「サンバ文化」だ。元来、「奴隷とされていたアフリカ系民が生き抜くために育んだ共生文化と精神性」がサンバだ。
また、1888年まで続いた奴隷制時代に、カーニバルの間だけ奴隷たちが自由を許されたことと、その後の「世界中からの移民増加による多国籍・混血=ブラジル化」により、「爆発的な民衆力が結集・解放・共有される市民文化・ムーブメント」となった経緯がある。欧州戦線に派兵した第二次世界大戦中もリオのカーニバルは開催されていたが、
2021年の「地上最大のスペクタル」は果たしてどうなるのだろうか? 現状では感染状況と準備期間に対して来年2月の開催を危ぶむ声が出始めている。
ブラジルの厳しい歴史的事情から生成された、特有の楽観的な発想転換力とタフネスで生きて来たリオ市民の顔も、4月下旬からひときわ曇り始めている。ここで、今年のリオのカーニバルを振り返ってレポートしたい。