一般的に、
受刑者=暴力的というイメージがあるため、被拘禁者らの釈放に抵抗がある人も少なくありません。
実は、
日本では受刑者等の多くが非暴力的犯罪で収監されています。例えば、2018年には、この年に逮捕された65歳以上の男性の43%、女性の78%の検挙理由は
万引きでした。(参照:
法務省)
この他に、多くの受刑者等は、
違法薬物の単純所持や使用で収監されています。2018年には、女性新規受刑者の約39%、男性については約25%の罪名が
覚せい剤取締法違反です 。こうした人々の多くは、物質使用障害を抱えているため、
服役ではなく、外部での専門的な治療が必要とされています。(参照:
法務省、
国立精神・神経医療研究センター)
拘禁施設内でいつ新型コロナウイルスの感染拡大が発生してもおかしくないなか、万引きや違法薬物の所持・使用など
軽微な犯罪で拘禁されている人は、生死を左右するリスクに直面しています。また、施設内で勤務する刑務官や医療従事者など、
刑務所の周りにあるコミュニティも膨大なリスクに晒されている状況です。
被拘禁者を
早期釈放するためには、法改正などの必要はありません。
例えば、刑事訴訟法482条という法律は、有罪判決を受けた者について、
健康状態や年齢が該当すれば刑の執行停止ができると定めています。(参照:
e-Gov)
この条文が用いられることはあまりありませんが、刑務所内の被拘禁者数を減らし、
日本の刑務所での新型コロナウイルス感染症の壊滅的打撃のリスクを軽減するために、早急に利用されるべきです。
同時に、施設収容率の削減を目的として用いられる
罰金刑や
執行猶予などの代替刑も引き続き広く利用する必要があります。
最後に、
被拘禁者が釈放された場合、さらなる更生を促すために支援が必要です。例えば、当人がコミュニティ内で通うことのできる
安全な支援施設、
医療へのアクセス、
経済的支援やさまざまな
社会的支援との繋がりなどの確保が考えられます。
早急に早期釈放を検討することにより、
拘禁施設での感染拡大のリスクを減らしつつ、被拘禁者のみならず刑務官や医療従事者などの命を守ることができるのではないでしょうか。
<取材・文/笠井哲平>
かさいてっぺい●’91年生まれ。早稲田大学国際教養学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校への留学を経て、’13年Googleに入社。’14年ロイター通信東京支局にて記者に転身し、「子どもの貧困」や「性暴力問題」をはじめとする社会問題を幅広く取材。’18年より国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのプログラムオフィサーとして、日本の人権問題の調査や政府への政策提言をおこなっている