右にある小学校の奥に、採石場跡地の斜面が見える。「要対策土」はここに置く
崩落の危険性だけではない。残土の埋立候補地の近くには、浄水場(距離190m)、老人施設(210m)、病院(280m)、小学校(430m)、中学校(460m)があるが、そこを「要対策土」を積んだダンプカーが1日に200台以上も往復する。だが、説明会では鉄道機構はその不安を払拭することができなかった。その質疑応答のいくつかを紹介する。
――候補地は、浄水場や小中学校が近接していて、住宅密集地の山側に位置している。なぜこのような場所が候補地として選ばれたのか。
鉄道機構:一定量の発生土を受け入れできる土地の大きさや地形条件、また、対策土受け入れへの土地所有者の了承などの条件を満たした場所を選定している。浄水場や小中学校に近接していることは把握しており、影響を及ぼさない対策工の検討を進める。
――重金属等に対する説明が不足。もっと具体的な情報や数値データ、対策工を説明してほしい。
鉄道機構:本説明会は
事前調査実施の理解を得る説明会と位置付けている。事前調査実施前に再度、重金属等に関する説明会を開催する。
――重金属が基準値を超えた場合どう対応するのか。
鉄道機構:仮に超過した場合の対策については、次回説明する。
他地域ではすでに「要対策土」のずさんな処分が問題に
つまり、鉄道機構は具体的回答をしなかったのだ。この対応に、「たいへんなことだ」との思いに駆られた住民が閉会後に残って話し合いを始めた。
「要対策土が崩落しては大惨事になる」
「要対策土から浸出した重金属が地下水汚染を起こすのではないか」
「鉄道機構は、事前調査をした上で採石場跡地を埋立地にするかどうかを決めると伝えたが、事前調査させてはダメだ。そこを突破口にして結局は埋立地にするはずだ」
こうした思いから「何かしなければ」との見解が一致し、「守る会」が立ち上がった。
「守る会」の住民はやみくもに恐れているのではない。
北海道新幹線のトンネル工事による「要対策土」を問題視している地域がほかにもあるからだ。
函館市に近い八雲町では、市民団体「流域の自然を考えるネットワーク」が、現地調査で「要対策土」が以下のようにずさんに処分されていたことを明らかにした。
★重金属が溶出した雨水は、ろ過を繰り返し雨水沈殿池に送られるが、そのろ過フィルターは目詰まりしたまま放置されていた。つまり、汚染水がそのまま河川に放流されていた。
★河川への排水チェックはPHのみで、月に1回程度しか行われていない。
★乾いた汚染土が、埃になって舞っていた。
ただし、筆者は八雲町での現地取材をしていない。詳細は、
同ネットワークのブログを参照してほしい。