自宅隔離となってまずするのは、家の掃除。不用品が庭先に並ぶ
子供のいる家庭はもう少し賑やかだ。子供たちは、昼間はカリキュラム通りにオンライン自宅学習をさせられているが、“放課後”の使い方に親は頭を悩ませている。しかしここもオンライン頼みは強い。親の携帯やタブレットを使って仲良しさんたちとつながったり、子供同士のおしゃべりを推奨したりと、親たちも自分たちの時間確保に知恵を絞っている。
70歳以上の高齢者や何らかの慢性病を抱えている人は、身を守るために12週間は自主隔離を徹底するように言われている。食料品の買い出しもできれば人に頼む。一人暮らしなら地域社会に相談してヘルパーを頼んだりもできるが、
実はロックダウンになる前から、こういった社会的な弱者や何らかのケアを必要としている人々の自主隔離生活をサポートしようと、SNSプラットフォームから自然発生的にボランティア・グループが形成され、民間のサポート体制はどんどん整っていった。
ボランティア・グループは3月半ばの段階で、すでに全国で400を超えていた。タスクは買い物サポート、犬の散歩、デリバリーの運転などが主だが、肉体的なサポートと同じくらい大切なのがメンタルヘルスケアであることも、早い段階から注目されていた。
外出制限1日目。イギリスらしいエキセントリックなエクササイズ方法
人と会わず、エンターテインメント会場へ出かけることもなくなり、自宅で隔離生活を送っていると、寂しさが募り、不安定になる人もいるだろう。ネット社会をのぞけば「いかに孤独を感じずに、隔離生活を充実したものにするか」という話題で持ちきりだ。
イングランドでは、先ほど述べたハイリスクの疾患を抱え自宅隔離されている150万人のために、
食料品や薬品を配達するためのボランティアを募ると24日の夜に発表したところ、 24時間で40万人以上の応募があり、全国から賞賛の声が上がっている(執筆時では56万人になったが、政府は募集人数を75万人まで引き上げた)。
このボランティアたちのタスクには、一人暮らしの人々に話しかけたり会話をしたりすることも含まれている。肉体のケアと同じように、孤独や不安の緩和は非常に重視されているのだ。また政府レベルだけでなく、企業や草の根のレベルでも、時間刻みで無数の助け合いが行われている。
お年寄りに温かい食事を無料で届けるケータリング会社、オンライン教室やエンターテインメントの設置、アルコール消毒ジェルを開発して配るビール醸造所……。隔離生活は人々を肉体的に隔てているが、実際のところコミュニティや家族、友人同士の連帯感はむしろ上がっているようでもある。
SNSでは名のある人もそうでない人も、あの手この手で人々を鼓舞しようとしている。隔離生活をイギリスらしいジョークで笑い飛ばしている人も多い。「リトル・ブリテン」で知られるコメディアンのマット・ルーカスさんは一昨日、イギリス国民が大好きなベイクト・ポテトを指南役とした替え歌で、手洗いや社会的距離の重要さを歌って10万件の「イイね」をもらった 。
民度の高さもさることながら、英国政府の決断も素早く頼りになる印象を受けている。