長い英国生活でほぼ初めて聞いた「ロックダウン」という言葉
スーパーの前で、間隔をあけて並ぶ人々
イギリス人がパブに行けなくなる。そんな日が来ようとは、よもやシャーロック・ホームズでも予見できなかったに違いない。
イギリスでは新型コロナウイルス対策の一環として、3月20日からパブやレストラン、カフェなどの飲食店を強制的に閉じ、人と人との接触を減らす「社会的距離」戦略に乗り出した。基本的に「自宅にいてください」と言う政府からの要請である。
これに先立って劇場や文化施設、学校もクローズしており、現在、国民は食料や薬を買いに出る以外に外出は控えるようにとのお達しだ。離れたところにいる家族や友人に会いに出かけることも当面は難しい状況になっている。いわゆる「ロックダウン=封鎖」と言われる政策である。
恥ずかしながら「ロックダウン」なんていう言葉に接すること自体、長い英国生活でほぼ初めての経験である。聞くのも初めてなら、それを体験することも初めて。 政府が実力で街を封鎖するというと穏やかではないが、今回のような緊急時に国民生活を守り、医療現場で戦う人々を応援するためには、短期間の不自由は致し方ないという感覚は共有できていると思う。
仕事は基本的に在宅が推奨されるが、一部「キーワーカー」と呼ばれる人々は仕事で外に出ることができる。医療従事者、社会奉仕者、教育者、警官、軍人、裁判所関係者、消防隊員、交通局職員、インフラ関係者、金融スタッフ、ジャーナリスト、デリバリー・スタッフ、スーパーマーケットのスタッフなどがキーワーカーであり、社会の基盤を担っていると考えられている。
薬局の前でも、間隔をあけて並ぶ人々が
初めてのロックダウン体験の感想を正直に書くと、実際のところ「さほど窮屈ではない」。要は「必要のないミーティングを避けましょう」と言っているわけで、基本的な生活が脅かされているわけではなく、必要であればテクノロジーでいくらでも人とのつながりを保つことができるのだから。
外出は禁止されているわけではなく、制限されている状態だ。生活必需品を買うための外出は許されており、散歩やランニング、サイクリングなどエクササイズのために外に出るのも、1日1回まで可能である。違反者は30ポンドの罰金が課されると言うけど、いったい誰が2回目で誰が3回目のエクササイズで路上にいるのかなんて、誰にもわからない。現時点では「良識に任せられている」のだと言えるだろう。
スーパーでの買い物は、店内の人口密度をコントロールするため、入場制限が設けられている。また入場を待っている間も人と人との間は2mをキープするよう推奨されているので、人と人が間隔をあけて並ぶ風景も、ほんの数日で当たり前のものになった。皆がどんどんロックダウンに慣れてきているのだ。