私が飲み会の席で、多くの人に向かって皆に10万円だそうと言ったら、誰もが10万のカネを支払うと思うだろう。ところが、実際は今まで奢ってきた飲み食いの5万円や、クーポンや店舗に交渉して3万円分負けさせていた分も加えての10万円分だと言ったらどう思うだろうか? 実際に財布から出すのは2万円だけだったら、誰もがそれは10万円出すのとは違うと言うはずである。
ところが、4月7日に閣議決定された、緊急経済対策の中身を見ていくとコロナウィルス対策にしては不思議な項目が次々と出てくるのだ。
例えば、
住宅市場安定化対策事業(住まい給付金)、「マイナンバーポイント」を活用した消費活性化策、事業継承・世代交代支援事業、地方創生拠点整備交付金、首都圏空港の機能強化、スマート農業技術の開発実証プロジェクト、一人一台端末の前倒し整備、学習データ基盤の検討、遠隔教育による家庭学習環境の整備、公共施設における花きの活用拡大支援、 JAPANブランド育成支援事業、酒類の海外展開推進事業、労働力不足の解消に向けたスマート農業の導入実証など、驚くような事業のオンパレードなのだ。
これらは、
新型コロナウィルス対策のために発案されたものだろうか? それとも前からあったものをコロナ対策として半ば強引に組み込んだものだろうか? 果たしてこれは私たちが待っていた感染予防や経済対策なのであろうか?
私は頭を抱えてしまった。そして、私が新型コロナ対策予算だと思うものを令和2年度一般会計補正予算にやっと見つけた。
新型コロナウィルス 感染症緊急経済対策関係経費16兆7059億円とあった。この予算のために特例公債(赤字国債)14兆4767億円を当てることも記されている。108兆円という数字ばかりが国民に浸透しているので、あまりにも差がありすぎるが、これがコロナウイルス対策予算の本丸なのだろう。その中身を見ていこう。雇用の維持と事業の継続のために10兆6308億円、感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発に1兆8097億円、経済活動回復のために1兆8492億円、強靭な経済構造の構築に9172億円、予備費1兆5000億円である。
つまり、条件が合わないと支給されない1世帯あたり30万円の給付金や、前年度の事業収入の落ち込みを支給する制度などから、コロナウィルス問題が終息した後の旅行補助、イベント関連のクーポン、1億枚の布製マスクを1世帯2枚づつ配る事業の466億円などもここに入るというわけだ。
これでは
中身のほとんどない張りぼての経済対策だと言われても仕方がない。安倍政権は緊急事態宣言を出しても財布をほとんど開かないつもりなのだ。これなら、新規の赤字国債は14兆5000億円というのもうなづける。
国民が確実にもらえるのは、児童手当の上乗せ1回のみ1万円と、1世帯につき布製のマスク2枚なのである。
ここまで読んできていただいてがっかりしたかたも多いと思う。ほとんど報道されないのでご存知ないかたも多いだろうが、立憲民主党、日本共産党、国民民主党、れいわ新鮮組など野党各党は、今回の対策では不十分だと財務省、与党に繰り返し詰め寄っている。与党では公明党からも声が上がり始めた。
太平洋戦争後、最大の危機であるのに、これだけ出し渋る理由がわからない。出し渋るだけでなく、
さも出しているように108兆円という数字までぶち上げるのに至っては、少しずるさまで感じてしまう。政治というのはそういうものなのか?
さて、ここで私がなすべきことは、拙文をここまで読んでくださった皆さん個人が申請すればもらえる給付金などについて、できるだけ分かりやすく説明して、ひとりでも多くの人に、事業をされてる方にこの難局を乗り越えるための資金を得てもらうことである。まず企業の方にぜひ考えてもらいたいものが、
雇用調整助成金である。なぜなら
4月から6月までの期間限定で、解雇をせずに従業員を休業(今は家にいた方が安全なのでオススメ)などをした場合の補助率が引き上げられている。大企業で通常が2分の1なのが4分の3まで。中小企業は3分の2から10分の9まで引き上げられている。1日の上限金額などもあり不十分かもしれないが、非正規の労働者も対象になるというので検討に値するはずだ。雇用調整助成金の仕組みなどはネットで厚生労働省の「
雇用調整助成金ガイドブック」が簡単にダウンロードできるので見てもらいたい。
次に「
持続化給付金」という名称になる予定のもので、事業収入が前年同月比 50%以上減少した事業者に、中堅・中小企業は上限 200 万円、個人事業主は上 限 100 万円の範囲内で、前年度の事業収入から減った金額を給付するもの。ネットで申し込めるようになる予定。具体的な申請方法などについては経済産業省のホームページで今後発表になる。
そして、誰もが知りたい1世帯あたり30万円の給付金についてである。ハードルは高く評判も悪い。この基準が4月10日に変わった。できるだけ分かりやすく説明したい。
今まであった
住民税非課税世帯という枠がなくなった。
2月から6月までの間で1か月間だけでも、収入が単身者なら10万円、2人世帯なら15万円、3人世帯で20万円、4人世帯で25万円以下になることがあったならもらえるようになった。もしくは、
世帯主の収入が半分以上減って、上記水準の2倍未満になれば良くなった。単身者なら20万円、2人世帯なら30万円以下になれば基準をクリアするわけだ。例えば、単身者で40万の給与をもらっていた人が、1か月でも半分以下の19万5000円になったのなら、30万円もらえるということになる。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、「50%以下では基準が厳しいので、せめて30%以上減った世帯に支給できるようにするべき」と声を上げている。
また、世帯主の収入を基準としているので、例えば、
妻が解雇され世帯全体としては半分以下の収入になったとしても対象にならないということもある。これも見直されるべきだと思う。
申し込みはまだ先のことになるが、郵送での申請が原則だが、ネットでの申し込みも可能になる可能性がある。給与明細が提出書類として必要になるので、用意しておきたい。
ちなみに、この働く人なら最も気になる30万円の給付制度であるが、安倍首相が言う108兆円の緊急経済対策予算のうち、組まれた金額はたった4兆円ほどである。追加の経済対策、それも真の経済対策が早急に求められている。ラフな私案は
前回の私の拙文に載せてある。よろしければ読んでいただきたい。
<文/佐藤治彦>