連載100回を記念して、微表情分析にまつわるあらゆる疑問にお答え!
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。清水建二の微表情学の連載が今回をもって100回を迎えることが出来ました。いつも本連載をご愛読頂いている皆さまのおかげです。どうもありがとうございます。
本連載は2016年5月にスタートしました。この頃は、微表情って何?というリアクションが大半でした。あれから4年。微表情という言葉が浸透しつつあるのを肌で感じています。しかし、まだまだメジャーというわけではありません。
そこで、記念すべき連載100回の今回は、はじめて微表情という言葉に触れる方から微表情について知識がある方まで、「なるほど!」と思って頂けるような微表情の話題、微表情の最前線にいるからこそわかる話題を、Q&A式で語りたいと思います。
Q1.微表情って何?
微表情とは抑制された感情が、意識・無意識問わず、一瞬の表情として顔に生じる現象です。1960年代に、自殺願望を隠した入院患者の顔に一瞬だけ現れた苦悩の表情が発見されたことをきっかけに研究がスタートしました。2000年以降、実証研究が行われるようになり、これまで0.2秒と言われていた微表情はおおむね0.5秒ほど続く現象であることがわかっています。
Q2.微表情は何の役に立つ?
アメリカではCIAやFBI、警察における取り調べで活用されることが多いようです。ここ日本でも、類似の使い方もされていますが、営業、交渉、教育、カウンセリングといった広く対人コミュニケーションに従事する方の支援スキルとして活用されています。
Q3.具体的には?
例えば、営業の例をあげましょう。営業員が、「こちらのサービス単価は、8,000円です。」と言います。そのとき、潜在顧客は「え!」と驚きの声を発します。しかし、顔をよく観ると、驚き表情に加え、一瞬だけ上唇が引き上げられています。これは嫌悪の微表情です。
「8,000円は高いから、買わない。」という意味だと推測できます。嫌悪感情は、拒絶という行動に向かうからです。サービスの質を考えるといかに8,000円が得か、あるいは、どれだけ値下げ出来るか、他のおまけを付けられるか、という営業戦略をとらないと、この顧客はサービスを購入してくれない可能性が高いでしょう。
なお、単なる驚き表情だけの場合、引き続きサービスについて説明を続ける戦略でよいでしょう。驚きは「もっと知りたい」という情報検索行動に向かいます。目下、サービスに興味はあるけど判断保留、という状態だと推測できます。
Q4.微表情を見抜くことが出来れば、ウソがわかる?
わかりません。ウソ検知の文脈では微表情は、ホットスポットと呼ばれます。ホットスポットとは、深堀ポイントという意味です。例えば、AとBの話題を話す犯罪容疑者がいるとします。
Aの話題を普通の表情で話しています。Bの話題に差し掛かったとき、微表情が浮かびました。ここでBの話題についてウソをついていると断定してはいけません。Aに比べてBを精査すべきという判断にとどめます。
なお、ウソをついている者の表情には微表情が生じるという傾向がわかっているため、微表情を見つけた段階で「ウソつき!」と判断しても偶然よりは高い確率でウソを捉えることはできるでしょう。しかし、間違いもあるので即断はやめるべきです。ちなみに微表情の有無からウソを検知できる確率は、70%程度ということが近年の研究で実証されています。
Q5.微表情を見抜けるようになるにはどうすればよい?
専用の微表情検知ビデオでトレーニングするのが効率的です。様々な微表情写真や動画が、0.1~0.5秒のスピードで変化するのをとらえるトレーニングです。
1時間程度トレーニングすれば、80%くらいは読み取れるようになります。そう、微表情は「これから微表情が出ますよ、注意して観ていて下さい。」という状況なら、比較的すぐに見抜けるようになるのです。