実在しなかった交際相手の「女子高生」。嘘を暴くため、男は微表情研究者となった

筆者が交際していた「女子高生」の正体が明らかに

意外過ぎる結末を迎えた「誘拐」

 前回に続き、本連載著者の清水が、微表情の世界に入るキッカケとなった事件について語っていきます。  21歳のとき私は、ある金曜日の晩、知り合って数ヶ月の「女子高生」Mから男に連れ去られているから助けて欲しいと連絡を受け、男から要求された身代金「あるだけの金」を持って受け渡し場所に向かいました。  私服警察官が数十人警戒しているなか、犯人は現れず。幾度となく繰り返される犯人からの受け渡し場所変更に翻弄される清水と警察官ら。捜査の結果、犯人の居場所を突き止めた警察は、男を逮捕、彼女を保護。そして事件では、衝撃の事実が発覚します。  取調べを受けている男の様子がどうも変なのです。  「連れ去り?」「誘拐って何?」  こんな調子だそうです。ここまで大胆な犯行をとぼけるなんて常識的に考えられません。そこで警察官は彼女のほうに焦点を当てます。すると彼女は…ポツリポツリと告白し始めたそうです。  「はい、自分でやりました。一緒にいた男の人は何も知りません」  なんと、この誘拐事件は、彼女の自作自演だったのです。男の人は、男の声が必要になったときのためにいてもらっただけのようで、何も知らずに一日彼女と付き合っていただけのようでした。  警察の見解によれば、彼女は私から金銭を得るために数ヶ月前から近づき、本狂言誘拐、恐喝をしたのだということです。資産家の息子でもない、普通の家庭、しかも浪人生に金目的で近づいてきたなんて、何とも釈然としませんが、この事件以来、彼女とは会っていないので真相はわかりません。

彼女の狂言誘拐……その先にあった衝撃的な事実

 この事件自体が驚きではありますが、さらに驚くべきことが、警察の取り調べにより明らかになりました。それは……  彼女が私に伝えていた名前、年齢、職業が全くのデタラメであった、ということです。  彼女の偽名は、本名と全く異なり、実年齢は23歳(6歳もサバ読んでた!)、職業は、当然女子校生ではなく、無職。趣味のコスプレは本当のようでした。  私は数ヶ月間、誰と過ごしていたのでしょうか。彼女はなぜ私に全くウソの人物像を作り上げ、近づいてきたのでしょうか。本当に金銭目的だったのでしょうか。そもそも、人は自分のプロフィールをこんなに長い期間偽って、人と交流できるものなのでしょうか。そもそも彼女は、人格障害などの精神疾患を患っていたのでしょうか。  事件解決後の数週間、私は何にも身が入らず、うわの空。上記のことばかり考えていました(「そのせい」で、と言っておきましょう。私は次の年も浪人することになります)。時を経るにしたがって少しづつ、浪人生としての生活に戻りつつありましたが、ふとしたときに上記の疑問が逡巡し、私の思考を支配しました。 「よし、こうなったら徹底的になぜ人がウソをつくのかを研究しよう」「ウソをどうすれば見抜けるようになるのかも研究しよう」
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合理的行動だけで説明できない人間の答えは、きっと科学の中にある
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