【春のダイヤ改正】進むモーダルシフトの前に横たわる課題とは?

線路

photo by Akiyoshi Matsuoka (public domain)

 3月14日に控えたJRグループによるダイヤ改正で貨物便が増設・新設されていることからも明らかなように、いま輸送業界ではトラックから鉄道へのモーダルシフトが進んでいる。  エコロジーやトラックドライバーの不足、あるいはネット通販の拡大という輸送ニーズの増加などが背景にあるが、モーダルシフトが進む一方で課題も見えてきつつある。 ※前編「トラックから鉄道へ。見直される鉄道貨物輸送」(http://hbol.jp/21618)  JR貨物でダイヤ編成を担当する社員は、「輸送需要の大きな路線では、これ以上本数を増やすのはかなり厳しい」と打ち明ける。   「JR貨物の列車と言っても、走るのはJR東日本や東海など旅客会社の線路の上。そのため、好きに走らせるわけにはいきません。朝と夕方の通勤時間帯の在来線や特急列車などは優先するという取り決めがあり、さらに夜間に本数を増やそうにも線路の保守間合い確保も必要です。東海道線は旅客列車だけでもかなり本数が多いですから、これ以上貨物列車を増やすのは至難の業なんです」  鉄道において欠かせない“線路”というインフラを他社に委ねている以上、こうした問題はどうしてもついて回る。ここ数年不祥事が続いているJR北海道の経営がさらに悪化すれば、貨物列車が走っている路線そのものの存廃も俎上に上がるだろう。  鉄道専門誌の編集者は言う。 「今春の北陸新幹線金沢延伸に伴って並行在来線が第三セクター化されます。この三セクにとっても、貨物列車の線路使用料は重要な収入源なのですが、逆に言えば貨物列車はこの在来線がなければ運行できないという意味でもある。人が乗る旅客路線ばかりが注目されますが、鉄道による貨物輸送の重要性も踏まえた上で、赤字路線の維持を考えて欲しいですね」  実際に鉄道貨物輸送の果たしている役割は小さくない。東日本大震災で東北の交通網が麻痺した際、ガソリンや灯油を日本海側経由で被災地に運んだ実績もある。また、北海道では有珠山噴火で室蘭本線が運休になった際、赤字路線である函館本線側を貨物列車が走ることで物流を維持することができた。  こうした過去の事例も踏まえ、モーダルシフトの進む今だからこそ、鉄道貨物輸送の重要性を考えなおす必要がありそうだ。 <取材・文・撮影/境正雄(鉄道ジャーナリスト)>