【春のダイヤ改正】トラックから鉄道へ。見直される鉄道貨物輸送

福山通運専用列車

東京貨物ターミナル駅を出る福山通運専用列車

 今年3月14日には、毎年恒例のJRグループによるダイヤ改正が行われる。既に昨年末にその概要は発表されており、目玉となるのは北陸新幹線長野~金沢間の開通、上野東京ラインの開通、北斗星・トワイライトエクスプレスの廃止といったところだろう。だが、その裏で気になるのが、JR貨物のダイヤ改正だ。  今回のダイヤ改正で、JR貨物は東京~福岡間の列車を増設するほか、隅田川~大館間にもエコ関連物資列車1往復を新設すると発表している。特に注目したいのが、東京~福岡の列車増設。現在、深夜帯に東京貨物ターミナルを出発して翌日夕方に福岡貨物ターミナルに到着する貨物列車は、23時台に2本と午前2時台に1本運行されている。ダイヤ改正では、23時台に新たに1本新設することで、旺盛な輸送需要に対応するという。  山手貨物線が湘南新宿ラインの線路に転用されたように、ここ数年鉄道貨物輸送は減少する一方だったが、ここに来て回復の兆しを見せているとのことだ。  JR貨物のOBは、こうした動きに対して次のように話す。 「鉄道貨物の輸送量は年々右肩下がりで、1987年度には5600万t以上あったところ、2011年度には3000万tを切るところまで落ち込んでいました。ところが、2012年度は本当に僅かですが輸送量が回復。現在も、総輸送量自体はなかなか伸びませんが、東京~福岡などの長距離輸送では確実にトラックから鉄道へのシフト(モーダルシフト)が進んでいる。CO2排出量がトラックの1/6ということもあり、国土交通省もモーダルシフトを推進しています。こうした状況を受けて、ここ数年ダイヤ改正では列車の新設や速達化などに積極的になっているのです」  この背景には、トラックドライバーの不足とネット通販などの拡大があるという。大手運送会社で鉄道貨物輸送を担当する社員は言う。 「貨物輸送に鉄道を使うメリットは実はかなり多い。行楽シーズンの渋滞にも巻き込まれないし、急に発生した輸送需要もコンテナの輸送枠を確保するだけで済むので、ドライバーを確保するよりもはるかに簡単です。最近はネット通販の拡大などで、長距離輸送でも事前に輸送量が掴みきれないこともある。ドライバー不足も相まって、ここ数年は鉄道利用が確実に増加しています」  それを裏付けるのが、通運会社による専用貨物列車の運行だ。佐川急便は2004年からいち早く新型貨物電車による貸切列車の運行を行っているし、2012年春には福山通運が専用列車の運行を開始。また、自動車メーカーのトヨタも製造部品輸送のために専用列車TOYOTA LONGPASS EXPRESSを運行している。 「昨年末には、イオンが中心になって東京~大阪間を1日1往復する専用列車を走らせています。イオンの自社ブランド製造委託メーカーである花王やアサヒビールなどに呼びかけて実現したもの。この列車の運行に際し、JR貨物の石田忠正会長は『イオン号の汽笛はモーダルシフトの本格始動を告げる号砲になる』と気勢をあげています」(JR貨物OB)  これだけ聞けば、トラック輸送が減少して事故や渋滞も少なくなり、さらに鉄道ならではの定時制によって荷物の速達性も保たれる……といいことづくめ。ただ、さらなる貨物列車の増設には大きなハードルがあるという。 ⇒後編「進むモーダルシフトに残る課題とは?」(http://hbol.jp/21622)に続く <取材・文・撮影/境正雄(鉄道ジャーナリスト)>