なぜ「ダメ会議」はなくならないのか?
働き方改革を推進するなか、限られた勤務時間で生産性を上げることに取り組んでいる企業は多い。その一環で、会議の回数の削減や、会議の時間の短縮を図ろうとしているが、時間内に合意形成できないという声を従来からよく聞く。
新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務者が増大し、そもそも会議を設定できない状況に陥っている企業もあれば、ネット会議システムに参加して会議が行われるようになり、ネット会議でのファシリテーションの仕方に戸惑っている企業も急増している。
一定時間内に合意形成できない会議の状況を聞いてみると、大きくわけて2つのパターンがあることがわかってきた。ひとつ目のパターンは、途中から異論や懸念が噴出し、紛糾して収拾がつかなくなって、時間切れになってしまう、いわば「時間切れの会議」だ。
方針説明者や進行役と、参加者の間で、議論の応酬が繰り返され、参加者は疲労困憊に陥る。在宅勤務者の増大により、次の会議設定が難しくなったり、先の日程になってしまうことなどもあり、意思決定に従来よりもさらに時間がかかるようになってしまう。
これを繰り返していると、会議参加者は諦めの境地に陥る。「どうせ会議で意見を言っても、結論がでない」「何度会議を実施しても、合意形成ができない」という諦念が流布し、会議で発言が出なくなる。
方針説明者や進行役はこれ幸いと、同意を得たものとみなして、その方針を決定事項とする。しかし、参加者は本心では合意していないので、会議で決定したことが実行に移されない。いわば「見せかけの合意の会議」だ。
会議で時間切れになることもく、見せかけの合意にも陥らずに、一定時間内で合意形成できる方法はないだろうか。筆者は20年来、さまざまな企業の各層のメンバーと演習したり、企業をサポートしているが、未だに一発で一定時間内に合意形成することができるスキルはモデル化できていない。
しかし、私は諦めておらず、演習やサポートを繰り返しながら、できるだけ短時間で、できるだけ確度の高い合意形成が実現できるスキルをモデル化したいと考えている。これが私のライフワークだ。
一発で一定時間内で合意形成するモデルは開発できていないが、同じ手法を3回程度繰り返せば、1時間でほぼ必ず合意形成できるスキルはモデル化できている。これが、「4つの質問で合意形成するスキル」だ。
4つの質問とは、「洗い上げ質問」「掘り下げ質問」「示唆質問」「まとめの質問」だ。
方針説明者が方針を説明する。進行役がまず繰り出すのが「洗い上げ質問」だ。「ただいまの方針について、気になることがあれば遠慮なく出してください」「異論があればどんなことでも聞かせてください」「反対意見もおっしゃってください」と異論や懸念を洗い上げる。
10人程度で1時間の会議を実施するとして、たいていの場合10分程度で、異論や懸念は出尽くす。ただし、10分程度で異論や懸念を出尽くす状態にもっていくためには、方針説明者や進行役が、決してしてはいけないことがある。
それは、出された異論や懸念に対して、決して言い返さないということだ。「いや、それは気にする必要がない。先ほど方針説明者が説明したでしょう」「そのような異論をもつこと自体がおかしい」「その反対意見については、先ほどの資料に問題ないことが書いてある」などと、異論や懸念にたいして応酬するから会議が紛糾し、いくら時間があっても合意形成ができなくなるか、応酬に嫌気がさして、見せかけの合意に陥ってしまうのだ。
時間切れや見せかけの合意に陥る
会議の始めには異論や懸念を歓迎する
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