なぜ「ダメ会議」はなくならないのか?

合意形成は順序立てて

 言い返さないだけではない、異論や懸念の発言があったとしても、目の色にも、顔の色にも、声のトーンにも、ネガティブなニュアンスを決して出さないことが不可欠だ。ネガティブどころか、「それは、よい意見ですね」「気づきませんでした」「ありがとう」というリアクションをして、異論や懸念が出ることに歓迎の意思表示をし続けていく。そうしていけば、10分程度で異論や懸念が洗い上げられる。  このように申し上げると、「参加者に言いたいことを言わせているだけでは、まとまる話もまとまらない」「ますます紛糾する」「10も20も異論や懸念が出されたら、1時間で合意形成することなど絶対できない」という反応を受ける。  しかし、心配ない。その後の合意形成は、「掘り下げ質問」「示唆質問」「まとめの質問」によって実現できる。それも「示唆質問」、「まとめの質問」のプロセスを平均3回程度回すことで、合意形成できてしまうのだ。2つめの「掘り下げ質問」については、次回紹介させていただく。

多人数の会議が失敗するプロセス

 質問:会議で合意形成できない  1対1の面談では、「相手を巻き込む5質問」で、今後の改善点の合意形成をすることはわかりました。1対多数の会議で、多数のメンバーに対して、一定時間内に合意形成することができません。途中から紛糾してしまい、時間切れになってしまいます。 それを繰り返していると「どうせ会議をしてもまとまらないから」という理由で、意見を言わない人が多くなってしまい、会議が形骸化してしまいます。どうしてそうなってしまうのでしょうか?  回答:応酬するから紛糾し、それが高ずると見せかけの合意になる  一定時間内に合意形成する会議で、途中から紛糾してしまうのは、進行役が無節操に議論の応酬をさせたり、なかには進行役自身が議論の応酬をしてしまったりするからです。異論や懸念の発言が出るたびに、議論の応酬になってしまうと、時間切れになってしまいます。  それを避けようと、トップダウンで押しつけようとしたり、異論や懸念が出ないようにしたりしてしまうと、参加者にあきらめの思いが拡散し、本音の発言をする人がいなくなってしまい、見せかけの合意に陥ってしまいます。 図表 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第183回】 <文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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