グレタ・トゥーンベリにビリー・アイリッシュ……。世界を席巻するティーンエイジャーの反抗

気候変動への政府・富裕層の責任を問うグレタ

 そして、大事なのは2人が社会的な問題意識を共有していることだ。グレタ・トゥーンベリの主張の一部を抜き出してみよう。気候変動問題について、政府や富裕層の責任を問うているのは留意されていいだろう。  「みんなのせいだってことは、誰のせいでもない。だから(スウェーデンの)首相の言い分は、私たちはこのままでいいってことよ。でも本当は、誰かのせい。ガス排出量のほとんどは、数百の企業からのものでしょ。ごく少数の飛びぬけてリッチな人たちが地球全体を破壊して、何兆クローナ(何十兆円)もの大金を稼いでいる。それが危険なことだと知っているのに。その人たちと同じように、首相は嘘をついているのよ」「この危機の原因をつくったのは全員じゃなくて、ごく一部の人たち」(『グレタ たったひとりのストライキ』海と月社)と述べている。3月5日にも欧州議会で演説し、いますぐ温室効果ガスを大幅に削減するべきだと主張している。

トランプ批判とグレタへのシンパシー

 ビリー・アイリッシュもまた、ロサンゼルス・タイムズのインタビューの中でこのようなことを言っている。  「2020年が心配、愚かなトランプはおそらく再選されるだろう。でも恐ろしい人が好きな人もいるから。変だけど」と批判。グレタ・トゥーンベリが「リッチな人」の責任を問うように、トランプという為政者に対して批判をしているわけだ。グラミー賞は大事だけど、自分が世界の終わりについて心配する必要がなくなったらね、という趣旨の発言もしている。非営利団体のグローバル・シチズンとのパートナーシップも結び、気候変動問題にも関心を持つ。  「オール・ザ・グッド・ガールズ・ゴー・トゥ・ヘル」のPVや歌詞が気候変動問題に対しての彼女の危機感を表明しているものとも言われる。  そして、ビリー・アイリッシュはグレタ・トゥーンベリへのシンパシーを表明している。2019年9月にあげられた「Our House is on Fire(私たちの家が燃えている)」という動画などを見るとわかるだろう。気候変動ストライキへの参加を呼びかけたのだ。  この2人の感性や思考のシンクロぶりは、世界の人びとにとって何がテーマとなっているのかを端的に浮かび上がらせているのではないだろうか。
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炙りだされたマチズモへの抵抗
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