新型コロナで中止になった1万人規模のイベント「技術書典8」、オンライン開催への挑戦

技術書典 応援祭

技術書典8が中止 オンライン イベントの立ち上げ

 「技術書典」というイベントがある。技術書を扱った、同人誌即売会だ。年に2回のペースでおこなわれており、既に7回開催されている。前回の第7回は、2019年9月22日におこなわれた。その時のサークル参加数は642。来場数は9千7百人になる。1日に11万7千部の本が購入される大きなイベントだ(参照:技術書典ブログ)。  第8回は、2月29日、3月1日の2日間開催の予定だった。順調に成長しているイベント。多くの技術者が集う祭り。しかし、2月17日に中止が発表された。新型コロナウイルスの影響である。  2月16日の「不要不急の集会自粛」の報道に加えて、IT企業各社の集会禁止、自宅勤務要請の結果を受けてのことである。参加者の安全確保が困難という理由も挙げられているが、もうひとつの「当日スタッフの確保の見通しが立たなくなりました」というのが大きいと推測される。スタッフがいなければイベントは開催できない。1万人規模のイベントとなれば、そのための人員確保は簡単にはできない。苦渋の決断だったと思われる。  また合わせて、参加費の7,480円(税込み)の返金がないことも発表された。「会場費のみでも600万を超えている」のが原因である。イベントをおこなうには、事前に多額の金が出て行く。国の保証がないなら強行するイベントが出るのは、そのためだ。  この「返金なし」の件については、特にサークル参加者側での混乱はなかった。今回はさすがに、どうしようもないだろう。自然災害に類することだ。私もサークル参加者の1人だったが、仕方がないだろうと素直に思った。  さて、話はこれで終わりではない。中止の発表とともに、オンラインでおこなう「技術書典 応援祭」への移行が宣言された。そして2月28日に、「技術書典 応援祭」を3月7日から4月6日にかけておこなうことが発表された。  Webサイト上での決済、ダウンロードによる本やデータの販売。それだけではなく、物理本を運営に送り、そこから通販もおこなうという。それらの準備を急ピッチでおこない、3月7日の開催に漕ぎ着けた。  それが、「技術書典 応援祭:技術書のオンラインマーケット」である。

運営も技術者ならではの転換。それでも作業は大変

 「技術書典」は、技術者たちが集まるイベントのため、運営する人たちも技術者だ。そのため、こうした開発を自前でおこなうことができる。しかし、期間が短いために開発期間は限られている。開発の進行は、Twitterの呟きから窺えた。端から見ていても大変そうだった。また、バグへの対処にも時間を取られているようだった。  開催前は、特定の種類のファイルがアップロードできない不具合があった。開催直後は、購入した本が上手く表示されないトラブルもあった。一気に全ての機能を実装できるわけではない。バグを潰したあとは本来の理想型に近付けるために開発が継続された。  物理本の発送もある。倉庫に届いている本の数は6000冊以上だそうなので、そうした部分の大変さもあるだろう。  徐々に環境が整備されていきながら、そろそろ3週間が経とうとしている。というわけで、新型コロナウイルスの影響で発生した「リアルなイベント」の代替の「オンラインイベント」の、サークル参加者側の体験と感想を書いてみようと思う。
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「オンライン参加」はどうだったのか?
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