従業員が濃厚接触者になるケースも! 不動産業界、コロナの影響で「店舗型」から「ネット型」への転換進むか

内見 新型コロナウイルスが収束する兆しが見えない。感染拡大を防ぐため、3月下旬には東京都や神奈川県などで不要不急の外出を控える要請が出されたほどだ。こうした中で影響を受けるのが、飲食店や衣料品、スポーツジムなど店舗を展開するビジネスを行う企業だ。今後も外出を控える動きが続けば、営業したとしても客足は減り、減益は免れない。  不動産業界も例外ではない。都内の賃貸仲介会社で働く吉田さん(仮名)は、「例年なら3月は忙しい時期。でも今年はお客さんの数が減り、営業活動が苦戦しています」と不安そうに語った。  部屋を借りたり、家を買ったりしようとする人は店舗に出向かなければならないほか、基本的にはスタッフと対面でコミュニケーションをする。不動産業界で働く人の中には「新型コロナウイルスを機に、業界のあり方を見直すべき」と考える人もいる。

社員が濃厚接触者となったケースも

 発表された時期が3月下旬と少し前になるが、不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」の「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」からは、不動産業界が受ける影響が見てとれる。  調査を行った3月上旬時点の企業活動への影響を聞いたところ、「影響が出ている」の回答率が70.5%に上り、新型コロナウイルスが企業活動に暗い影を落としている。おそらく、この数字は調査時点に比べてさらに上がっていると思われる。  どんなことに影響が出ているのかを質問すると、賃貸や売買など業態を問わず「内見者の減少」や「(従業員の)マスクなど衛生用品が確保できない」「売上の減少」「問い合わせの減少」が挙がった。  業態別では、賃貸仲介で「来店者の減少」が、売買仲介で「問い合わせの減少」が他の業態よりも高い。  売買分譲では「戸建ての引き渡し遅れ」の回答が目立った。中国産の建材の輸入遅れが起こり、住宅設備の供給が間に合わないケースが考えられる。  自由回答では、「社員が感染、または濃厚接触者となった」というコメントが見られた。従業員が感染すれば事業所を一時的に閉鎖せざるをえなくなり、企業活動への悪影響は免れない。

賃料の滞納やテナントの解約による減益を懸念

 「今後の影響を心配しているか」を聞くと、全体の91.9%が「心配している」(「あてはまる」と「ややあてはまる」の合計)と回答。  「あてはまる」の回答を業態別で見ると、「売買分譲」(62.8%)で最も高く、「賃貸仲介」(51.2%)や「賃貸管理」(51.7%)に約10ポイントの差をつけている。  業態を問わず半数以上が「売上の減少」「来店者の減少」「内見者の減少」「問合せの減少」を心配する声が多く挙がっている。  自由回答では、居住者の収入低下による家賃滞納リスクのほか、テナントの撤退や契約解除に警戒を強めるコメントが寄せられた。
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「3月は来店客数が減った。売上は伸び悩んでいます」
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