どの内閣であっても
危機管理対応の要となる官房長官が、国家的な危機の「重大局面」の中、コントロールセンターである官邸を離れるのは、にわかに信じがたいことです。官房長官は、官房副長官に準じる危機管理監を直属の部下とし、危機管理担当大臣を担っています。平時であっても、原則として、常に官邸もしくはその近くから離れられません。
そこで浮かぶ仮説が、
このコロナ危機で、危機管理担当の菅官房長官は、コロナ危機の対応を担当していないということです。実際、安倍内閣で常に強烈な存在感を示してきた菅官房長官が、この危機で極めて薄い影しか見られないのです。今回の沖縄県入りは、その象徴的な出来事に過ぎません。
1月から2月にかけて、コロナ問題を主として担当していたのは、
加藤勝信厚生労働大臣でした。加藤大臣が国会の予算委員会で、ダイヤモンドプリンセス号に関して答弁していた様子は、連日のように報じられました。
3月に入り、コロナ問題の担当は
西村康稔経済財政担当大臣になりました。安倍首相は3月6日、
西村経財大臣をコロナ問題の担当大臣に任命しました。それ以来、この問題に関しては、加藤大臣から西村大臣に焦点が移りました。例えば、改正特別措置法が成立した後も、
人工呼吸器の増産に関わるなど、担当大臣として動いています。
菅官房長官は、毎日の記者会見こそ行っていますが、危機管理担当大臣としてではありません。平日の午前と午後2回の定例記者会見は、内閣を代表して官房長官が行うもので、平時の対応に過ぎません。また、
朝日新聞の報道によると、3月の全国一斉休校においても、菅官房長官は蚊帳の外だったとのことです。
おそらく、コロナ危機において、菅官房長官は「
平時業務担当」をしていると考えられます。沖縄訪問も官房長官としてでなく、兼務している「
沖縄基地負担軽減担当大臣」としての訪問と見ると、理解できます。もちろん、それでも通常業務に他ならず、先に指摘した「不要不急」との疑問はぬぐえません。
これは、
菅官房長官が安倍内閣において数少ない「有能な大臣」であるため、平時の業務が彼に集中した結果と考えられます。その理由として、菅官房長官が
出席する会議の多さがあります。経済財政諮問会議や男女共同参画会議など、法令や慣例で出席する会議の他、首相が出席する会議には必ず出席します。官房長官が長を務める会議等も「アイヌ政策推進本部」「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」「統計改革推進会議」などがあります。
要するに、本来ならば他の大臣が担うべき業務について、菅官房長官に集中させた結果、
もっとも重要な任務の危機管理において、支障をきたしているわけです。