京畿道加平郡にある協会で会見を行う新天地の教祖であるイ・マンヒと殺到する報道陣 (Photo by AFP=時事)
韓国の新型コロナウィルスの“震源地”として話題になった、新興宗教団体「新天地」(正式名称:新天地イエス教証しの幕屋聖殿)。
韓国国内には、自らを創造主やイエスの生まれ変わりと主張する者が40数人、彼らを教祖とする信者は約200万人存在していると言われているが、そんな中、とりわけ若者の信者が多いのが新天地の特徴である。
昨年、新天地が新規入信者10万人中1000人を無作為に選んで行なったアンケートの年齢構成では20代が550人、30代が120人で若年層が67%を占めていることが判明した。現在約24万人と言われる信者の年齢構成もこれに準ずると推定される。
元信者が韓国メディアの取材に対し「信者の6割は若者」と話しており、筆者の取材でも「大邱にある若者だけのグループで1万2千人はいる」(元信者)という証言を得ている。
そんな同教団元信者の若者に、心の内を聞いてみた。
訪ねたのは新天地から脱会した信者が集まる韓国基督教異端相談所協会・九里相談所、通称「九里教会」。教会を率いる
シン・ヒョヌク牧師はアンチ新天地の先鋒として韓国で名高く、彼自身もまた、‘84年から新天地に20年以上入信し同教団の幹部まで上り詰めた人物だ。
そのため新天地からは「最大の裏切り者」と呼ばれ、敵視されている。
入り口のインターホンを押すと、固く閉ざされたガラスドアの向こうから現れた人影が「どちら様?」と怪訝そうな声を出す。
「日本から来た記者です。●時にお約束したかと思うのですが……」と話すと、迎え入れられた。
しばらくすると殺気立ったシン牧師が現れ「日本?! 何の目的なの?」と筆者に詰め寄る。仲介人からの連絡がうまく伝わっていなかったようで、筆者が趣旨を説明すると「忙しいから他の者に聞いて」と言って外に消えた。
スタッフによると厳戒態勢は無理もなく、新天地によるコロナ騒動で連日取材が殺到している上、「新天地からの刺客が記者や業者を装ってしばしば教会に入ってくる」ということだった。
「先日も盗聴器を置かれたり、窓の外に設置されたりしました。新天地の信者が玄関外の階段に潜んでいたこともあります。礼拝堂に暴漢が侵入して破壊されたり、放火されて全焼したこともありました」(教会スタッフ)
シン牧師も街中で何者かに暴行を受けたり、自宅をマークされるなどをされつつも、新天地信者の脱会運動に取り組んでいるという。
「脱会してきたふりをして、教会に潜り込んでくるスパイもいる。昨年発覚したときは、シン牧師が『李萬煕が死んだら、また戻ってきなさい』と言って送り返しました」(スタッフ)
今でも、教会には新天地信者が元信者を連れ戻しにやってくるという。「背道者(裏切り者)」と非難されることもある。
「新天地に入信する人は、人間関係にコンプレックスがあり、恐れを抱いている人が多い。そんな人にとって『背道者』という言葉は、泣き所を突かれた気持ちになるのです」(25歳元信者)