ダヌカさんは仮放免直後に市中の病院から「再収容はうつ病を悪化させる」との診断をもらった
日本政府がダヌカさんをP氏と認識している以上、P氏名義のパスポートがないダヌカさんはスリランカへの強制送還すらされず、一生を入管施設で過ごす恐れがあった。その不安から心身が変調する。これは、牛久入管の被収容者316人(2019年6月末時点)のほとんどに共通した問題ではあるが、ダヌカさんの場合は「拒食症」と「うつ病」を発症する。
2019年9月に入ってからダヌカさんはみるみる痩せていった。9月27日には車椅子で面会室に現れた。体調を尋ねると「食べたらすぐに吐くんです」と答え、翌月には「最近は水も吐く」と体にほとんど栄養が供給されない状況に陥っていた。
加えて、「一生をここで過ごすのか…」との絶望感から、ダヌカさんは9月19日に「うつ病」と診断されたが、その治療薬を服用するために水を飲んでも吐いた。ダヌカさんは何度も「点滴してください」と訴えたが、牛久入管の診療室は「必要ない」と治療を拒否。結果としてダヌカさんは、70kgあった体重が9月19日には56kg、11月21日には約53kg、そして12月23日には約47kgと、骨と皮だけの状態となる。
点滴はやっと12月19日に始まるが、ブドウ糖だけで、ビタミンなどの栄養ある点滴はされなかった。ダヌカさんの婚約者や支援者が怖れたのは、年末年始の9連休は入管には医療従事者がゼロになるので、ダヌカさんの体がもたないのではということだった。
12月26日に仮放免されたばかりのダヌカさんを気遣う婚約者のAさん。今回の仮放免を機に、二人は正式に入籍する予定だという
ところが12月24日、Aさんにダヌカさんから「クリスマスプレゼントだよ!」との電話が入った。仮放免が突然決まったのだ。そして2日後、冒頭で書いた通りに仮放免される。仮放免の場で感想を求められたダヌカさんは、体を震わせて「なんで人間がここまで(の扱いを)されるか判らないです……」と苦しそうに答えた。その体をAさんがさすっていた。
その場にいた担当弁護士の駒井知会弁護士は「こういった死の淵に追い込んでからの仮放免は許されない」と憤り、Aさんも「仮放免されましたが、これからがたいへんです。うつ病治療のための長い闘病生活に入ります。でも私は彼を支えます」と毅然と語った。