こうした中、SNSでは「新型肺炎が広まる状況下、咳やくしゃみが出るならば外出しないでほしい」という声も度々見受けられるが、それはあまりにも極端な考えだろう。
とりわけ春は「
花粉症」の季節でもある。くしゃみや鼻水といった症状は、風邪引きや新型肺炎感染者でなくとも、どうしても抑えることができない。
また、花粉症以外にも「自分も肩身の狭い思いをしている」と訴える人たちがいる。
「
喘息(ぜんそく)」の持ち主たちだ。
喘息の主な症状は「咳」。
通年連続した深い咳が出てしまう彼らにとって、「咳エチケット」は大きな課題で、時には“重症患者”に見られることもあるようで、実際、筆者の周囲にいる喘息持ちからは、
「この春ほど咳がしにくいと思ったことはない」
「咳をするとあからさまに嫌な顔をされる。電車の中やエレベーターでは、なるべく咳が出ないようにこらえている」
といった声が聞こえてくる。
さらにSNSでは、
「喘息の人がマスクに書いたという”この咳は喘息です、不快にさせてごめんなさい”(内容少し違うかも汗マーク)
ニュースを見て涙…喘息はただでさえ辛い/なのに喘息の咳で嫌な顔をされるなんて本当に悲しい/早くコロナ終息して!!」(原文ママ)
「咳しただけでコロナ。くしゃみしただけでコロナ。罵声浴びせ睨んでちょっと過剰に反応しすぎじゃないかとニュースを観て思った。もしかしたらその中には喘息持ちの方もいれば花粉症持ちの方も居るかもしれない。もし自分がその立場になった時同じことされたらきっと嫌だと思う…」(原文ママ)
「コロナでもインフルでも重症化しやすいのにマスクは買えず感染の危機に脅かされ、発作で咳するだけでマスクしていても白い目で見られたり避けられたり怒られたりし、とうとう治療薬まで奪われそうな喘息患者、人権なさすぎでは?」
という投稿も見られた。
検索すると喘息であることを周知してもらうための「喘息バッヂ」はたくさん出てくる
そんな中、喘息持ちの人たちの間でにわかに注目を浴びるのが、喘息マークが施された「
缶バッジ」だ。
大きさや絵柄、表現には様々なパターンがあるが、「ぜんそくです うつりません」などと書かれたバッジは、「うつさない咳もあるということを周囲に知ってもらえる」と、頻繁に深く咳込む喘息持ちの人たちの間でにわかに注目を集めており、精神的ストレスを軽減できると評判がいい。
ただこの時世においては、その「症状」が新型肺炎なのか風邪なのか、花粉症なのか、はたまた喘息によるものなのかは自分自身でも判別がつかないこともある。
PCR検査が未だ簡単に受けられず、感染しても無症状の期間もあるため、「この咳はうつらない」という決めつけもまた禁物ではあるが、自分が喘息持ちであることを知らせる上では有効なサインだと言えるだろう。
他人と距離を保ちながらもマナーは守ろうとする日本の習慣が生んだ「咳エチケット」。過敏になりすぎる必要はないかもしれないが、簡単にできるマナーや最低限の配慮は、1人ひとりが持っていて全く損はない。
<文/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
@AikiHashimoto