少しのミスが命に関わるプレッシャー。スタッフが安心して働けるようサポートしたい
続いては、東京都内や東海、北陸、関西で訪問看護を展開する「ソフィアメディ株式会社」の取り組みを紹介する。
訪問看護とは、様々な疾患や障害を持ちながら在宅で生活する人、終末期で入院できない人や、最期を住み慣れた自宅で迎えたい人のサポートを看護師が行うこと。地域内で看護を必要とする人に対し、家族、医療機関、介護施設などが連携してケアを行うことを「地域包括ケアシステム」と呼び、訪問看護は重要な役割を担う。訪問看護の需要は近年高まっており、同社は直近2年で拠点数、スタッフ数ともに増やしている。
自転車に乗り、患者宅へ向かうスタッフ
ソフィアメディの看護師は定期的に患者宅へ赴き、患者の医療的ケアや、リハビリなどを行う。しかし介護と同じように、現場での判断ミスが患者の命の危険に直結するプレッシャーのある仕事だ。また患者の容態急変に備え、24時間体制で臨む必要もある。そこで同社が徹底して取り組んでいるのが「スタッフが安心して仕事に取り組めるサポート」だ。
「組織が大きくなりつつあった2018年に、会社がどうあるべきかを定める『北極星プロジェクト』を立ち上げました。経営陣だけでなく、現場責任者を中心に代表の看護師、セラピスト20名以上が集まって議論を重ね、ビジョン、ミッション、5つのスピリッツを定めました」
<ビジョン>
安心であたたかな在宅医療を日本中にゆきわたらせ、ひとりでも多くの方に、こころから満たされた人生を。
<ミッション>
英知を尽くして「生きる」を看る。
<スピリッツ>
あの手この手、打つ手は無限。ソフィアの5 SPIRITS。
1.お客様第一主義に徹し、常に相手本位に行動する。
2.プロとして誇り高く、あらゆる可能性を追求する。
3.品質は人の質と心得て、感性と徳性を磨く。
4.学ぶ心を忘れず、自ら率先して変化の原動力となる。
5.仲間を認め、おせっかい、お人好しの精神で支え合う。
「WOW!」に「HAPPY75」親しみやすいネーミングをつける
北極星プロジェクトと並んで、同社ではスタッフがイキイキと働けるよう「ソフィアWOW!(Work for Our Wonderful life!)」という施策を打ち出した。
WOWの一部を紹介する。
「2時間単位で取得可能な有給休暇」
「LGBTQのスタッフの結婚・育児・就労支援」
「弁護士ホットラインを社内外に設置(仕事でもプライベートでも相談可)
「社内融資制度、給与前払い制度」
「HAPPY “75” (定年後の再雇用制度の上限年齢を65歳から75歳へ引き上げる制度)」
「2時間の有給休暇制度は好評です。たとえばお客様からキャンセルが出た時に申請すればリフレッシュする時間に充てられます。周りに気兼ねなく仕事から離れられることで、気持ちの切り替えができます。
命に関わる仕事なので、何か心配事があり仕事に支障を来たす状況は避けたいですよね。そこで公私を問わず弁護士に相談できるサービスをスタートしました。生きていればさまざまな問題に直面するものです。そんなときに気軽に悩みを打ち明けられる場があると、心理的な負担が和らぎます」
人材開発グループ グループマネジャーの宗梨恵子氏
また働き方改革を推進する際には、「ネーミングは大切」と宗氏は語る。たとえば再雇用ではなく、HAPPY75とすることで会社が歓迎しているというメッセージを強化できる。実際、「この制度があるから入社を決めた」という人もいるという。「ソフィアWOW!」や「北極星プロジェクト」もシンプルで覚えやすい。