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中国や日本だけでなく、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。2月29日にはフランスのベラン保健相が同国内で集団感染が発生していると発表。5000人超の室内行事や握手を禁止するよう求めた。
日本では日常的にこの時期はマスクを着用する人の姿は珍しくないが、ヨーロッパではほとんど見ることがない。体調不良の場合は自主的に休みを取ったり、在宅勤務をする文化が一般的だからという理由によるものだ。ただ、そんな
ヨーロッパでも空港など人が多く集まる場所ではマスクを着用する人の姿が目立つようになっている。
こうした状況について、フランスの動物用ワクチンメーカーに勤める男性(39歳)は次のように語る。
「ウイルスは変異していくので、今現在
わかっている情報だけで危険性を判断するのは難しい。そのうえで、福島の原発事故のときもそうでしたが、フランス人は放射能やウイルスがきても、見えない壁でフランス国内には入ってこないと思っているフシがある(苦笑)。そういう冗談を言う人も少なくありません。また、
ウイルスは目に見えないので、その点も人々の警戒心が低くなったり、反対に過度なパニックを起こしてしまう原因だと思います」
決して万全な準備ができていたとは言い難いようで、各国とも混乱している状況が伝わってくる。
「イタリアで感染者が出たあとも、『イタリア北部なら大丈夫だろう』と通常どおりサッカーの試合(欧州CL/リヨン対ユベントス)が行われるなど、大きなお金が絡むイベントは行われていました。今では
職場でも握手を禁止するよう徹底されていますが、初期対応には疑問が残ります」
今後の感染拡大を防ぐためにも、これまで以上に先手を打っていく必要があるだろう。
その対策のひとつがマスクの着用だが、日本のように買い占め騒動こそ起きていないものの、手に入れても着けられない事情があるという。リヨン在住のある男性(36歳)は、その悩みを次のように打ち明ける。
「市内ではすでに
マスクを着けたアジア系への暴力行為や罵倒する様子が目撃されています。私の彼女もアジア系で、
健康のことを考えたら着用してほしいのですが、真っ先にヘイトのターゲットになってしまう。着けたら殺されるんじゃないかと怖いです。本人も公共の交通機関を利用するときなど、不安なので着けたいようですが、危ないのでやめるように忠告しています……」
もちろん地域にもよるが、
身を守るためのマスクを着けることで、かえって危険に晒されてしまうというもどかしさを抱えているのだ。