環境大臣に加えて原子力防災担当大臣も兼務する小泉氏からは、原発問題でも前向きの発言が飛び出した。質疑応答で、小泉氏が述べた「再生可能エネルギー主力電源化」が安倍政権の原発推進政策と矛盾することと原発事故時の避難計画の実効性のなさについて、筆者はこう質問した。
「現場で起こっていることは、送電線の枠が原発再稼働分で埋められて、再生可能エネルギー拡大の阻害要因になっている。こういう問題についても環境大臣として物を申していくのですか?
伊方原発の稼働停止に関連して、放射能汚染の被害を受ける『祝島』(山口県上関町)の方が、『朝日新聞』の記事なのですが、『避難する船が十分にない』と(コメントしています)。避難計画に実効性がないまま(原発が)稼働している現実について、原子力防災担当大臣としての権限もあるわけですから、それについても問題視していくのですか?」
小泉氏はこう答えた。
「環境省としては、まさに再生可能エネルギーを主力電源にしていく閣議決定を阻害する要因は一つでも多く突破をしていく省庁でありたいというふうに考えているので、まさに『隗より始めよ』で再生可能エネルギーの調達を100%していくことを、まずは今年新宿御苑から環境省自身が身をもって示していきたいと考えています」
「(二番目の避難計画について)私も昨年の原子力総合防災訓練で島根原発に関わるような地域の現状を現場で見ました。原子力防災担当大臣として最重要の役割の一つが、地域の皆さんと一緒になって避難計画作りをしっかりと進めていくことだと思います。こういった(伊方原発停止)判決はありましたが、常に、全国の中でまだこの避難計画作りができていない地域もありますので、しっかりとできあがるように継続して支援をしっかりとしていきたい」
原発推進に突き進む安倍首相
環境省内の取り組みだけでなく、原子力ムラの本丸である経産省に異議申立をするのか否かが重要なので「経産省に物を申していくのでしょうか? 原発再稼働はおかしいのではないかということで」と再質問をすると、小泉氏からは「すでに経産省には自らの考えが伝わっている」と言わんばかりの回答が返ってきた。
「(経産省とは)さまざまなコミュニケーションは日ごろからやっているので、私の問題意識は重々承知の上だと思います」
避難計画についての回答も踏み込んだものだった。伊方原発差止仮処分の翌1月18日付の『朝日新聞』が紹介したのは、原発から南東40キロほどのところに位置する祝島の漁師・橋本久男氏の「舩を持っている島民は20人ほど。避難することになっても全員、無事に避難できる保証はない」という発言だった。
原発事故による放射能汚染被害を受ける地域(“被害地元”)の声を聞いていけば、ズサンな避難計画のまま原発が稼働している実態を目の当たりにするのは確実で、「実効性のある避難計画ができるまで原発の稼働は止めるべき」という結論に至ることは容易に想像できる。
石炭火力輸出と同様、原発政策でも問題提起することは十分に考えられるのだ。いつ小泉環境大臣兼原子力防災担当大臣が、「原発ゼロ実現」にプラスとなる具体的行動を始めるのか。今後の言動が注目される。
<文/横田一>