記者会見で石炭火力反対を表明する小泉進次郎環境大臣
「(気候変動問題に関する)セクシー発言は意味不明」「温室効果ガスを大量排出する石炭火力推進政策をなぜ変えようとしないのか」などと国内外で批判が噴出した小泉進次郎環境大臣が一転、今年1月21日の会見で石炭火力プラント輸出に反対する発言をした。日本が国内外の批判を受けていることにも触れ、「国際社会や国民から理解できる政策の形につなげていきたい」と意気込み、関係各省との調整を進める考えも明らかにしたのだ。
この“変身ぶり”を翌22日に大手新聞は一斉に報じた。『朝日新聞』が「石炭火力規制に前向き発言 小泉環境相 海外発電所建設計画 調査の意向」と銘打つと、『毎日新聞』も「小泉氏 石炭火力輸出『おかしい』」と報じ、『東京新聞』も「小泉氏、石炭火力に反対 ベトナムで日本企業計画」という見出しで足並みをそろえたのだ。
筆者も驚いた。大臣就任直後に福島県庁で直撃しても無言だったが、この日の会見では別人のような発言を連発したからだ。冒頭の説明でベトナムへの火力プラント輸出案件「ブンアン2」のプロジェクト名をあげて問題点を列挙、JBICを所管する財務省などの「各省と調整していきたい」と意気込んだのだ。
「日本の政策を、よりよい脱炭素化に資する方向に変えていきたい」
自ら耳にした虚偽説明の暴露もした。
「この件の実態は、日本の商社が出資をして『JBIC(国際協力銀行)』が入り、プラントのメーカーとして中国のエナジーチャイナと米国のGEといった形で成っています。今までさんざん聞いてきた一つのロジックは『日本がやらないと中国が席巻する』とも聞いてきました。しかしこの構図は日本がお金を出して、結果、つくっているのは中国とアメリカ。こういう実態を私はやはりおかしいと思います」
筆者はこの時、「原発ゼロ社会」実現を訴えて全国講演行脚を続ける父・小泉純一郎元首相と重なり合うものを感じた。首相時代に専門家から「原発は安全で、コストが安くて、クリーンなエネルギー」と聞いて原発推進政策を進めた純一郎氏だが、総理辞任後、福島原発事故を見て疑問を抱いて猛勉強、「頭のいい人にだまされていた」と気が付いて総理時代の過ちを正すべく、講演活動を本格化。全国各地で「原発は安全じゃない。クリーンでもない。金まみれの、金食い虫の環境汚染産業だ」と熱っぽく語りながら、脱原発(再生可能エネルギーへの転換)を訴え続けている。
「原発ゼロ実現」を訴える全国講演行脚を続ける小泉純一郎元首相
講演の“定番ネタ”は、「論語」の「過ちては改むるに憚ることなかれ」の引用。だまされた過ちを告知して改めていく姿勢だが、この「やられたら(騙されたら)やり返す」という父の“戦闘的DNA”を息子が引き継いでいたようにみえたのだ。石炭火力関連の質問が集中した質疑応答でも、小泉氏は反対の根拠を次のように詳しく語っていった。
「『日本がお金を出して中国メーカーが取る』が本当にいいのでしょうか。私は適切だとは思いません」「国際社会からはこれだけ批判を浴びながら、こういった実態があることはどう考えても私はおかしい。日本の政策をよりよい脱炭素化に資する方向に変えていきたい」「(石炭火力の輸出4要件は)『価格の競争力』、『相手国のエネルギー政策のロックイン(脱炭素化の阻害)』、『他国との技術的な優位性低下』、『日本が誇る最先端の超々臨界以上』ということ。普通聞けば、日本の超々臨界の技術だと思いますよね。実態は違うわけです」
国内外の反対世論を受け止めた小泉大臣が、石炭火力推進派に“宣戦布告”をしたようにも聞こえた。父の小泉元首相が、安倍首相を含む原発推進派との対決姿勢を鮮明にしたのと同じように、である。