AERA誌に連載する佐藤優氏の「池田大作研究」
朝日新聞出版が発行する『AERA』で昨年末に、佐藤優氏による連載〈池田大作研究 世界宗教への道を追う〉がスタートし、現在も連載が続いている。聖教新聞社の『池田大作全集』をふんだんに引用しながら、創価学会名誉会長にして創価学会インタナショナル(SGI)会長である池田氏の足跡や思想を解説するものだ。時折、〈池田の発想には(使徒の)パウロに共通するものがある〉(連載第4回)などとキリスト教を引き合いに出したりもしている。
この連載を現在出たものを通して見る限り、「方法論」に大きな問題を抱えているように思えてならない。それは
『池田大作全集』を中心とした教団の公式刊行物をソースとし、それによって創価学会の「内在的論理」をつかむことができるという前提に立っている点だ。
公式発表、特に全集のようなまとめ直された書籍を主なソースとして宗教団体を扱う手法では、ときに対象の実態を見誤る。特に社会的な問題を引き起こしたり批判を浴びてきたりしている類の宗教団体では、教団の公式発表や指導者の言動と現実との乖離が激しい。これまで20年近く「カルト」の問題を取材してきた私自身の経験からもそう感じる。私は幸福の科学関連の取材に力を入れてきたこともあって、宗教団体の公式発表がいかにアテにならないかを痛感している。
言葉の上ではどんなに綺麗事を語ったところで、実際の行動を含めた集団の実態を見なければ、社会的に公正な評価は下せない。オウム真理教も統一教会(現・世界平和統一家庭連合)も、教団の公式刊行物では、人類の救済だの平和だの悟りだのと素晴らしい言葉を語る優れた宗教指導者が作り上げた教団として描かれる。
「麻原彰晃は実にいいことを言っていた宗教指導者である。彼は“宗教に騙されるな!”と説いていた」
オウム問題を取材してきたあるジャーナリストが口走ったブラック・ジョークだ。実際にオウムは1991年に『宗教に騙されるな!』というタイトルで麻原彰晃の著書を発刊している。私自身、時折このジョークを拝借するが、なかなかウケがよい。
教団の公式刊行物に依存する論考の問題は、つまりはこういうことだ。カルトの問題を取材する視点から考えたい。
カルト問題も含め長らく宗教取材をしてきたジャーナリストの藤田庄市氏は、この連載について私とやり取りした際、連載8回目(『AERA』2月24日号掲載)までを前提として、こう語った。
「佐藤優氏の〈池田大作研究〉は、エキュメニカル神学(対象の内在的論理の把握)とインテリジェンスの“オシント(公開情報諜報)”を方法として、時代状況および背景を解説・付加しながら、池田神話の追認を図る、そうした社会的機能を果たしているのではないか。ただし連載では、池田氏の創価学会入信と活動はこれからなので、予断することなく注意深く検討の必要がある」
連載はまだ、池田氏と創価学会の出会いに差し掛かった程度で、「本題」に入る前の段階だ。扱われる個別の史実については今後の進行を待たなければ評価できない。しかし連載第1回でかなりの字数を割いて語られている「方法論」は、それだけで十分に問題視すべきものだった。
ここでは、連載全体の大前提となる「方法論」の問題に特化して考えたい。