UWP(Universal Windows Platform) アプリ
「モバイルのアプリストアの模倣」と解説すると、囲い込みのためだけに Microsoft Store があるように誤解されるかもしれない。しかし、Microsoft のストアアプリは、それだけのためのものではない。
現在の Windows 10 では、UWP(Universal Windows Platform) アプリが配布できる。UWPアプリは、これまでのアプリと比べてセキュリティ上の利点がある(参照:
Microsoft Docs)。
まず、モバイルアプリでは当たり前になっている、各種機能へのアクセス制限が存在する。開発者は、ファイルやUSBデバイス、カメラや位置情報、マイクなど、利用する機能をマニフェストで宣言する。そして、ユーザーは各機能について承認する。
また、UWPアプリでは、パッケージに同梱したDLL(ダイナミック リンク ライブラリ)をシステムに書き込まない。レジストリも汚さない。UWPアプリがインストールされるフォルダーは、管理者権限があっても中身を見ることができない。そして入手は、Microsoft Store という単一の場所になっている。最新アプリへの自動更新もおこなわれる。
こうした仕組みにより、UWPアプリは、ウイルスやマルウェアの混入がされにくくなっている。意図しない動作もおこなわないようになっている。このようなセキュリティ上の配慮は、ユーザーにとって大きなメリットだと言える。
開発者側のメリットとしては、すべてのデバイスに共通したAPIセットが挙げられる。デスクトップPC、Xbox、Mixed Reality ヘッドセットなど、Windows 10 デバイスであれば、UWPアプリはいずれでも動作する。また、Microsft Store に登録すれば、これらの全てに対応する。
収益化については、有料のダウンロード、アプリ内購入、広告と3種類あった。しかし、このうちの広告が終了する。今後は無料で提供して、広告で収益化ということができなくなる。広告が花盛りのモバイルアプリと比べて、この点はかなり後退したと言える。
オンラインソフト作家が見る、GitHubの台頭と、オンラインソフト配布サイトの没落
この数年ほどで、パソコン向けソフトウェアの世界は大きく変わった。そもそも、パソコンではなく、モバイルにユーザーがシフトした。その結果パソコンは、仕事で使うか、ハイスペックを要求する3Dゲームに用いるものといった色合いが増した。
開発者目線で言うと、ソフトウェアの入手は GitHub 経由が大幅に増えた。GitHub でソースコードが公開され、それに付随して自サイトでバイナリも配布されている。こうした形態を多く見るようになった。それに比例して、Vector などのオンラインソフト配布サイトは急激に縮小した。
ソフトウェアも大手のものは買い切りではなく、ユーザー登録してオンライン認証する形式が増えた。ライセンスをサーバー上で管理して、クライアントは、パソコンでもモバイルでも使えるという形態にシフトしている。
そして、パソコンではなくクラウドが中心になった。クライアントアプリは王様ではなく下僕になった。UI部分は、パソコンのソフトでも、モバイルのアプリでも、Webアプリでも構わない。そうした世界になってきている。
Microsft 自体も、クラウドの会社にシフトしている。パソコンのネイティブアプリにこだわる理由は減っている。優先順位が大きく下がっているのは、想像に難くない。
Microsoft Store が急になくなることはないだろう。しかし、今後の世の中の変化に合わせて変わらなければ、過去の遺物になる可能性がある。
逆に、Microsoft Store が存在感を広げる可能性もあるだろう。Microsft Store 向けのアプリが、動作する範囲を広げたらどうなるか? 近年 Microsoft は、クロスプラットフォーム戦略を加速している。Office が様々なデバイスで利用できるように、ストアアプリが Microsoft の名を冠さない各種デバイス上で動きだしたらどうなるか。Microsoft Store が今後も存続するなら、いずれ外へ広がっていくのではないかと思う。
<文/柳井政和>