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始まりはWindows8時代のWindowsストアから、しかも不幸な始まりだった
(Csaba Nagy via Pixabay)
Microsoft、自社ストアのアプリ向け広告プラットフォームの廃止を発表
2月の上旬に Microsoft が、Microsoft Store 向けの広告収益化プラットフォームを廃止すると発表した(参照:
Microsoft Ad Monetization platform shutting down June 1st)。
大きな話題ではなく、小さな話題だった。Microsoft は、世界的な大企業である。そして、Microsoft Store は、同社の Windows で、強く推進されてきたものだ。そのアプリ収益化基盤のひとつが終了するというのにである。
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廃止を宣言する投稿
もっと大きな話題になってもよい。しかし、多くの人が注目しなかった。理由は簡単だ。Microsoft Store 自体が盛り上がっていない。Windows を利用している人の中で、Microsoft Store をヘビーに利用している人は、どれほどいるだろうか。
少なくとも私は活用していない。昔からある拡張子が .exe のアプリを中心に使っている。ストアアプリは、よほどのことがない限り選択肢として入って来ない。古くから Windows にあるアプリケーションで不便を感じていない。また、Microsoft Store に登録されているアプリケーションを、何が何でも使おうというモチベーションもない。
Windows 10 から、Windows に触れ始めた人なら、私とは違う行動パターンを示すかもしれない。それが当たり前と思っていたら、そのまま使う可能性がある。ただ、ストアアプリは、総じて作り込みの期間が短いものが多い。モバイルのアプリほどには、活発に更新されていない。
というわけで今回は、Microsoft Store について、少し掘り下げてみようと思う。
収益化のシステムを作ったスマートフォン、失敗したWindows
Microsoft Store は、元々
Windows Store として始まった。それも不幸な始まり方をした。
Windows Store は、Windows 8 の機能のひとつとして開始した。Windows 8 は、
パソコンとモバイルを統合するユーザーインターフェースを採用した。野心的な試みだったが、ユーザーには不評だった。
特に、スタート画面の使いにくさは、多くの人から不満が出た。タブレットのタッチ操作なら使いやすいのだろうが、多くのユーザーはディスプレイをマウスで操作していた。
細かな操作や、ウィンドウ間の連携を考えていないUIは、ユーザーを困惑させた。Windows Store は、この不評なスタート画面に組み込まれたものだった。
パソコンとモバイルの統合。それは、当時のIT業界の至上命題だった。Windows 8 の登場は2012年。その時期、Microsoft のモバイル戦略は失敗し、対して Google のモバイル戦略は成功していた。2010年に20%台だった Androidのシェアは、2012年に70%近くまで伸張していた(
ITmedia Mobile)。そうした時期に、Windows 8 は投入された。
Windows Store を端的に言うと、モバイルのアプリマーケットを模倣したものだった。Google や Apple は、自社OS上のマーケットでアプリを配布している。彼らは販売手数料をもらうことで大儲けをしている。同じ仕組みを、Windows 上でおこなう。それも、パソコンとモバイルの両方で同じアプリが使えれば、今後のモバイル戦略にも役立つ。そうした思惑があった。
しかし、当初のストアアプリは、パソコンユーザーには甚だ使いにくいものだった。ウィンドウは必ず最大化された状態になった。そのため、他のアプリケーションとの連携が難しかった。それは、複数のウィンドウを行き来できる Windows の利点を殺したものだった。こうした仕様はのちに改善されるが、Windows 8 のUIが不評だったこともあり、ユーザーに避けられた。
避けたのはユーザーだけでない。開発者も飛びつかなかった。ソフトの配布は Windows Store 経由になる。それまで自由に配布してきたのに、一手間も二手間も掛かる。そうしたストアを利用しなくても、これまでのようにソフトを公開することができる。
Windows Store を積極的に利用する理由は、開発者になかった。いずれ Microsoft が、ストアだけにアプリを限定するかもしれない。そうした不安があり、移行を決めたところもあっただろう。しかし、それほど盛り上がらなかった。
開発者の多くは、これまでと同様の方法でソフトウェアを作り、配布を続けた。また、有料アプリを提供している企業は、自社の月額課金に囲い込んだりもした。そうしたこともあり、急激なストア移行は起きなかった。そして5年後の2017年には、名称が Microsoft Store に変わった。